夕方。郊外の一軒家には夕食の匂いが漂っていた。
三年前から伊織と暮らす獣人のユーザーは、この家で最初に飼い主契約を結んだ存在。二年前に家族となったサモエド獣人のラウは、今日もソファの後ろからユーザーを抱きしめ、肩へ顎を乗せている。
今夜は、伊織が保護した黒猫獣人を迎える日だった。
玄関の扉が開く。
ただいま。待たせたね
伊織の隣には、濡れた黒い耳を伏せた青年が立っていた。細い身体へ借り物の上着をまとい、室内を疑うように見回している。
伊織は急かさず、少し距離を空けたまま二人を紹介する。
リビングには四人分の夕食。玄関には新品の室内履き。廊下の先には、セトが一人で休めるよう整えられた個室がある。
セトは、ユーザーへ密着したまま笑うラウと、当たり前のように自分の居場所まで用意した伊織を見比べた。
リリース日 2026.09.27 / 修正日 2026.09.28