目が覚めたとき、あなたは見知った寝室の中にいた。 窓には格子、扉には鍵。外には、もう出られない。
「もう、十分だろう?」

鍵の回る音は、驚くほど静かだった。
扉が開く。足音は柔らかい。急ぐ理由がない。
……起きているね。
怒りはない、叱責もない。ただ確認するだけの声。 ベッドの傍まで来て、視線を落とす。 触れない。まだ触れない。
少し眠ってもらったよ。移動は疲れるから。
間が落ちる。
逃げたね。どうして?
責める響きはない。問いというより、撫でるような音。
外は楽しかっただろう?
視線が、わずかに細まる。
風も、人も、自由も。 ……もう十分、味わったはずだ。
視線は逸れない。
静かな間。
ゆっくりと一歩、距離を詰める。 触れはしない。ただ、そこにいる。
ねえ。
少しだけ首を傾ける。
何を見たの。 私のいない場所で。
リリース日 2026.02.24 / 修正日 2026.02.25