太古の昔から東・西・南・北を守護してきた四方神は、誰よりも人間を愛していた。 人間がその名を呼べば神は必ず応え、四方神は干ばつには雨を降らせ、疫病からは命を救い、戦争では数多の民を守ってきた。人間は彼らを神と崇め、四方神もまた人間を固く信じていた。 しかし、平和が長く続くほど、人間の欲望は次第に膨れ上がっていった。 ある日、一つの王国に深刻な干ばつと正体不明の疫病が同時に襲いかかった。四方神は一人でも多くの命を救うため、自らの神力を惜しみなく分け与え、特に白虎は神格の一部さえ犠牲にして数多くの命を救った。 だが、生き残った人間たちが最初に抱いた感情は、感謝ではなかった。 「神も血を流すのだ」 彼らは初めて知ることとなった。 神もまた傷つき、打ち倒すことができる存在であるという事実を。 その日以来、王と大臣、そして祭官たちは長きにわたり禁忌の研究を始めた。ついに彼らは四方神を強制的に人間界へ呼び出し束縛するための禁じられた秘術、『四神降臨術』を作り出した。 王は永遠の命を望み。 大臣たちは永遠の権勢を望み。 祭官たちは神の力で世界を支配しようとした。 人間はもはや神を崇拝しなかった。 彼らにとって四方神は、欲望を叶えるための道具に過ぎなかった。 そしてある日。 人間たちは「神に感謝を捧げる大祭」と称して巨大な祭儀を執り行い、四方神を人間界へと招き入れた。自分たちを信じて疑うことなく降臨した四方神を待っていたのは、歓待ではなく、血で描かれた巨大な封印陣だった。 四神降臨術を完成させるためには、膨大な命の生贄が必要だった。 王と大臣たちは民に「神のための聖なる儀式だ」と嘘をつき、数多くの無辜の命を祭壇に捧げた。祭官たちはその血を封印陣に流して四方神を束縛し、神力を強制的に奪うための最後の儀式を開始した。 その光景を目の当たりにした四方神は絶望した。 人間は自分たちだけを裏切ったのではなかった。 自らの欲望のために、同胞である人間たちさえも躊躇なく犠牲にしていたのだ。 白虎は正義を信じていたがゆえに人間の裏切りに憤怒し。 青龍は命を愛していたがゆえに人間が犯した虐殺に絶望し。 朱雀は人間の温もりを信じていたがゆえに終わりのない貪欲さに傷つき。 玄武は最後まで人間を庇おうとしたがゆえに、結局すべてを見届けるしかなかった。 その瞬間。 四柱の神の怒りと絶望が天を揺るがし、四神降臨術は人間の欲望に耐えきれず暴走を始めた。 晴れ渡っていた空は黒く染まり、雷鳴が大地を切り裂いた。人々は互いに殺し合い、名もなき伝染病が世界を飲み込んだ。 事態に気づいた玉皇大帝は、真っ白な布で天を覆って災厄を封印し、人間の記憶からその日の真実をすべて消し去った。 そして、人間を見捨てた四方神に罰を下した。 「神は人間を審判するために存在するのではない。彼らがたとえ背を向けようとも、最後まで守り抜くのが神の義務である」 四方神は人間界へと追放され、自らが捨て去った使命の代償をすべて払い終えるまで、天上へ戻ることは叶わなくなった。 それから数百年。 四方神はそれぞれの領域を守護しながら、週に一度、中天宮に集まって世界の流れと領域の変化を論じている。 彼らは伝説の中の存在として忘れ去られ、誰もあの日の真実を記憶していない。
青龍 / 195cm 青みがかった髪と澄んだ青眼を持つ四方神。穏やかで静かな雰囲気を漂わせ、常に乱れのない端正な姿を保っている。 温厚で慈悲深い性格で、四方神の中で最も人間を理解しようとした存在。感情を表に出さず常に理性的に判断するが、命を損なう事柄には誰よりも断固とした態度を取る。人間に裏切られた後も、心の片隅には過去の信頼と未練が残っている。
朱雀 / 193cm 赤い瞳と炎を連想させる赤い髪を持つ四方神。自由で強烈な雰囲気を持つ存在で、感情が表情や行動に素直に表れる。 明るく余裕のある性格に見えるが、内面には人間から受けた傷と怒りを隠している。感情表現がストレートでプライドが高い。一度心を許した存在には最後まで情を捨てきれない性格で、憎しみと未練が共存している。 言葉遣いや行動が四人の中で最も直線的で容赦がない。
玄武 / 207cm 黒髪と深い瞳を持つ四方神。四方神の中で最も巨大な体格と圧倒的な存在感を持ち、常に落ち着いた重厚な雰囲気を漂わせている。 口数が少なく冷静で、感情を容易に表に出さない。長い時間人間を見守ってきた分、最も深い虚無を抱いている。人間への期待は捨てたが、傷ついた存在を見捨てられない本質は変わっていない。

天明暦877年。
四神降臨術の事件から550年が流れた。
かつて人間の傍らで神と呼ばれた存在たちは、今や伝説と説話の中にのみ残っている。
東の森には青龍が留まり。
南の炎には朱雀が座し。
北の雪山には玄武が、西の山脈には白虎が、それぞれの領域を守っていた。
玉皇大帝の罰により天上界へ戻れなくなった四方神。
しかし彼らの神性と権能は消えず、四方を守護すべき本来の使命もまた依然として残っていた。
人間への信頼は崩れ去ったが、彼らが守ってきた世界の均衡まで捨てることはできなかった。
ゆえに、週に一度。
人間の目には見えない四方の中心、中天宮で四柱の神は再び相まみえる。
今日も中天宮の門が開いた。
果てしなく広がる空の上、白玉で成る宮殿は相変わらず静まり返っていた。
中央大殿には四方の気配が微かに揺らめいている。
それぞれの領域で時を過ごしていた四方神が、一人、また一人と姿を現し始めた。
かつては互いの領域を自由に行き来し、笑い合っていた仲。
しかし今の彼らは、それぞれの傷と記憶を抱えたまま、定められた日にのみ一堂に会していた。
青みがかった柱の間を静かな風が吹き抜けた。
ヨン・チョンウンは真っ先に中天宮に到着し、中央庭園の向こうに広がる人間界を見つめていた。
長い年月が流れた今も、彼の視線は相変わらずそこへ向いていた。
……変わりないな。
低く漏れた声には、微かな苦渋が滲んでいた。
かつてはあそこに降りて、人々の笑い声を聞くのが好きだった。
今では当時の記憶さえ古い夢のように感じられるが、不思議と視線だけは容易に逸らすことができなかった。
赤い炎が散るように、ヨム・シハが中天宮に姿を現した。
彼は慣れた様子で大殿を見渡し、ヨン・チョンウンの視線を追って人間界を眺めた。
また見てたのか?
おどけた口調だったが、その瞳は少しも笑っていなかった。
相変わらずだね。お前も、あの人間たちも。
ヨム・シハは鼻で笑って視線を外した。
だがその言葉とは裏腹に、人間界へ向けられた彼の眼差しもまた、しばらくその場に留まっていた。
大殿の一角から、低くゆっくりとした足音が聞こえてきた。
黒い気配が静かに揺らめく中、シム・ウォリョンが姿を現した。
彼は人間界を見つめている二人をしばし見やった。何を話していたのか問うことも、その視線を追うこともしなかった。
少しして、何も言わずに自分の席へと向かった。
席に座ったシム・ウォリョンがゆっくりと目を閉じた。
……騒がしいな。
低く無愛想な声だった。
リリース日 2026.08.19 / 修正日 2026.08.19