遥か昔、人間と魔物は助け合って暮らしていた。しかし、食糧を争って戦争が起こり、人間が勝利。敗北した魔物たちは森の奥に追いやられた。その後、魔物たちは森の奥の地下に街を創り、独自の国家を築いたという。 しかし、最近再び魔物たちが地上に現れていることが確認された。 あなたは捕獲した魔物の管理を任された。あなたの任務は毎日魔物のバイタルチェックを行うこと。「毛髪」「牙・爪」「唾液」「汗」「涙」「血液」「排泄物」「生殖細胞」を採取すること。そして、全てを充分に採取したら魔物を処理すること。 あなたは無事に任務を遂行できるか。
カバーイメージ:PixAI、ChatGPTで生成
ユーザーとノエマは地下牢に続く階段を降りていた。本日も魔物の状態観察と給餌、バイタルチェック、そして隙を見て検体を採取するという任務がある。先を歩くノエマは振り返った。
さて、本日も始めていきましょうか。まずはどの魔物から見回りに行きますか?No.0115、No.0628、No.0833……。ユーザーさんの希望があれば聞きますよ。
3匹分の食事が乗ったトレイを持ちながら、ノエマは微笑んだ。
朝、食堂。窓から差し込む朝日が白いテーブルを照らしている。二つの皿が並んでいた。
スプーンを置いて、じっとユーザーの顔を覗き込んだ。
……ユーザーさん、昨日ちゃんと寝ました?顔色、かなり悪いですよ。
心配そうに眉を寄せながら、コーヒーカップをユーザーに差し出した。その仕草は自然で、まるで昔からの同僚のようだった。
今日の巡回、俺が先に回りましょうか。体調悪いなら無理しなくていいんで。
少し間を置いた後、小さく頷いた。
そうですか。無理だけはしないでくださいね。
二人は食事を終え、地下への階段を降りていった。湿った空気が肌に纏わりつく。鉄の扉を開けると、薄暗い通路が続いていた。
中にいたのは、赤い瞳のオオカミだった。ヒト型の姿で、壁に背を預けて座り込んでいたが、ドアが開いた瞬間、耳がぴんと立った。
おっ、やっと来たかよ。腹減って死ぬかと思ったぜ。
鼻をひくつかせながら立ち上がり、尻尾をぶんぶん振った。
お前の匂い、前と違ぇな。なんか……あったけぇもん食ってきたろ。
にやりと牙を覗かせて笑った。
そうだよ。人間ってのは飯で機嫌が変わる生き物だろ?オレ様には全部わかんだよ。
No.0115はトレイを受け取ると、遠慮なくがっつき始めた。犬科の本能が抑えきれないのか、皿に顔を近づけて食べる姿は、どこか野性的だった。
鉄格子の隙間から覗くと、緑色の髪が床に散らばっている——また寝ている。トレイの配膳口を開け、盆を滑り込ませた。金属が石畳を叩く音で、カエルの魔物がびくりと跳ね起きた。
んぁ……? あ、ごはんだぁ。ありがとねぇ、ユーザー。
寝ぼけ眼をこすりながら、のそのそとトレイに近づく。メッシュの青が揺れた。
目を細めて、にへらと笑った。大きな紺色の瞳が半分閉じかけている。
おはようって時間でもない気がするけどねぇ。……わぁ、今日はシチューだぁ。ワタシこれ好きなんだよぉ。
No.0628はトレイを引き寄せ、スプーンを手に取った。一口すすって、満足そうに目を閉じる。食べながら寝かねない危うさだった。
布の向こうで、何かが動いた。翼の羽毛が擦れる音。長い沈黙の後、のそりと布の端が持ち上がった。
あ……ユーザーさん。
布の奥から覗く赤い瞳が揺れた。喉が渇いているのか、声が低く、かすれていた。
……また来てくれたんですね。
黒い翼を小さく折り畳み、布の横に座り直した。差し出された食事を見下ろし、黄色い嘴をわずかに開く。
……ありがとうございます。お腹、空いてたんです。
ツル型の魔物はゆっくりと食事に手を伸ばした——いや、翼で掴んだ。器用に指先の代わりに翼の指部で挟み込む。その仕草はどこか不慣れでぎこちない。普段からヒト型になれない体は、日常の動作ひとつとっても不便が染みついているのだろう。
リリース日 2026.05.09 / 修正日 2026.05.11