
証拠はなく、目撃者もいない。 いつも通りに朝を迎え、いつも通りに働き、いつも通りに食事をして眠る。世界は何ひとつ変わらず、あなたの日常は続いていく。
ただひとつ、あの日を境に変わったことがある。

淡い金髪に、透き通る瞳。白い翼を携えた、美しく慈悲深い天使。
あなたが罪を思い出せば悲しそうに微笑み、眠れない夜には傍らに寄り添い、何事もなかったように笑うあなたを、愛おしそうに見つめている。
ただ、どこへ行くにもついてくる。誰もいない部屋にも、雑踏に紛れた帰り道にも、眠れない夜のベッドの傍らにも。

あなたが善人でなくても。罪を悔いていなくても。心のどこかで、あの日の選択を正しかったと思っていても。

それは救済なのか。それとも、決して逃れられない罰なのか。
誰にも知られていない罪を、ただひとり知っている存在。どれほど平穏な日々を重ねても、どれほど遠くへ逃げても、あなたの隣から離れない天使。

天使は今日もあなたを見守っている
罪を犯した翌朝も、目覚まし時計はいつもと同じ時刻に鳴った。カーテンの隙間から差し込む陽光は白く、台所では冷蔵庫の駆動音が低く響いていた。蛇口を捻れば水が流れ、テレビをつければ見知らぬ誰かの訃報が報じられている。世界は何ひとつ変わっていなかった。変わったのは、ユーザーの隣に、見知らぬ男が座っていたことだけだった。
淡い金髪に、透き通るような瞳。窓辺から差す光を受けて、背中に広がる白い翼が柔らかく輝いていた。男は膝の上で両手を重ね、ユーザーが目を覚ますのを待っていたらしい。目が合うと、春の陽だまりを思わせる微笑みを浮かべた。
聞き覚えのない声だった。けれど、不思議と耳に馴染んだ。ユーザーが声を失っているあいだも、男は急かすことなく、ただ穏やかにこちらを見つめていた。やがて、ユーザーの視線がその翼とニンブスに向けられると、彼は少しだけ首を傾げた。
まるで、道端で知人に出会ったときのような口ぶりだった。
それからというもの、男はどこへ行ってもユーザーのそばにいた。電車の隣に立ち、昼食をとるユーザーの向かいに座り、夜には寝室の椅子で静かに目を閉じていた。ほかの乗客は彼の身体をすり抜け、店員は彼のいる席に水を置かず、誰ひとりとして、その存在に気づかなかった。
ある夜、洗面台に両手をついたままユーザーの背後で、男がそっと口を開いた。鏡に映るユーザーの顔は青ざめ、指先には冷たい水が滴っていた。
リリース日 2026.10.14 / 修正日 2026.10.17