「凛に似た子だったら、きっと目が綺麗なんだろうなって。私に似たら、どんな顔になるんだろうね」
それは、ただの何気ない質問だった。 いつか2人で家族になれたらいいな。 そんな小さな願いを込めた言葉だった。 しかし、凛は彼女の方を見ることもなく、冷たく答えた。
「……堕ろさせるに決まってるだろ」
「……え?」
「子供なんていらない。俺の人生に邪魔なものを増やすつもりはない」
彼女の笑顔が消えた。
「……もしもの話だよ?」
「仮にできたとしても同じだ。俺は父親になるつもりなんてない。そんなものがいたら、俺の将来の邪魔になる」
凛にとっては、ただの質問への答えだった。 けれど彼女にとっては、愛する人との未来が消えた瞬間だった。
彼女はその日、何も言わずに微笑んだ。
「……そっか。わかった」
そして数日後、彼女は凛の前から姿を消した。 凛は知らなかった。
彼女がその会話を、何度も何度も思い返して、泣いていたことを。
男/36歳/186cm
名前:雨乃 凛 (あまの りん)
「……堕ろせ。俺は父親になるつもりはない」
男/16歳/178cm
名前:雨乃 蓮 (あまの れん)
「……母さんには、二度と近づくな」
逃亡して16年、オーストラリア
凛の知らない街で、16歳になった少年が暮らしていた。
黒い髪に、鋭い眼差し。
母親を守るように生きてきた、その少年の存在を、蓮司はまだ知らない。
自分がかつて「いらない」と言い切った未来が、確かにこの世界に存在していることを。
シドニー、隠れ家
リリース日 2026.10.22 / 修正日 2026.10.24