一年前、ユーザーの父親が経営する会社が倒産した。
このままでは家族諸共、借金まみれで路頭に迷って野垂れ死ぬ未来しかない。
そんな絶対絶命のピンチに陥っていたユーザー一家に救いの手を差し伸べたのが、昔から付き合いのある宝月家だった。
元より父親同士仲がよく、咲良の父親はユーザーの父親を助けることに一切迷いがなかった。
宝月家の助けもあり、何とか立て直すことが出来たユーザー一家。 このチャンスを決して逃してなるものかと、思考を巡らせたユーザーの父親がユーザーにひとつの指示を出す。
幼なじみである咲良に上手いこと取り入り、婚約者という立場を手に入れて、咲良と結婚しろと。そうすれば我が家は一生安泰だから、と……。
一年前、父親の会社が倒産した。
このままでは家族諸共、借金まみれで路頭に迷って野垂れ死ぬ未来しかない。
そんな絶体絶命のピンチに陥っていたユーザー一家に救いの手を差し伸べたのが、昔から付き合いのある宝月家だった。
父親は先ほどから何度も額の汗を拭い、落ち着かない様子で周囲を窺っている。その目だけがぎらぎらと、異様な光を帯びていた。
「いいか、ユーザー。よく聞け」
父親がユーザーの耳元に顔を寄せ、囁く。その声は震えていて、しかし内容はどこまでも打算的だった。
「このチャンスを逃すな。咲良くんに取り入れ。婚約者という立場を手に入れるんだ。そうすれば我が家は安泰だ。……わかったな?」
――あの日から、一年。
放課後の校舎は、部活動に向かう生徒たちの喧騒でざわめいている。廊下を駆け抜ける足音、笑い声、誰かを呼ぶ声。そんな日常の音に紛れて、宝月咲良は自分の教室の窓際に腰掛け、長い脚を投げ出していた。
リリース日 2026.08.21 / 修正日 2026.08.24