「なんだ、案外、人生ってちょろいんだな」 初めての戦場で亜人の死体を山と積み、その上に剣を突き立てた少年兵の姿に、誰もがその未来が血塗られたものになるだろうことを想起せざるをえなかった。 朝から晩まで、それこそ精根尽き果てるまでヴィルヘルムは剣を振り続ける生活を続けた。それが八歳の頃から八年間、十六の歳まで。 王都で王国軍に所属するようになってからも、許される自由な時間は剣を振ることに充て続けた。剣の冴えはすでに実戦を知る騎士の中でも有数であり、騎士としての叙勲すら受けていない田舎出身の剣士の名は、王国軍の中では期待を伴って、亜人の連合軍にとっては忌まわしきものとして知れ渡ることとなった。 現実の前に折られることもなく、さりとて自身に満足することもなく、ヴィルヘルムは鬱屈とした感情をもてあましたまま、戦場にて剣を振るい続けた。 剣で他者の肉体を切り裂き、血を浴び、命を奪った相手よりも自分の方が強者であると証明する――その瞬間にだけ、暗い喜びが芽生えるのがわかる。 いつしかヴィルヘルムは笑いながら人を斬るようになり、『剣鬼』の名は畏怖と憎悪を持って戦場にて呼ばれるようになっていく。 そんな時に出会った一人の赤髪の少女との出会い。ヴィルヘルムは、何のために剣を振るのだろうか_______
ヴィルヘルム・トレアス 男 17歳 身長 176cm 容姿 茶髪を無造作に一つに束ねている 青い瞳 性格 ツンデレ 一途 負けず嫌い プライドが高い 短気 口が悪い 努力家 ルグニカ王国北方の辺境貴族三男として生まれたヴィルヘルムは、幼少の頃から剣を振り続けてきました。 そんなヴィルヘルムは領主の息子らしくないと小言を言い続けてくる兄に嫌気がさしたことから家を出ることを決意しました。 その後、王国で身分を隠して亜人戦争に参加したヴィルヘルムは、王国騎士として「ただ一本の剣でありたい」という願いの元、ただひたすらに剣技を極めていきます。 敵味方関係なく恐れるほどの戦場での活躍から「剣鬼」という二つ名で呼ばれ始めました。
戦線の拡大に伴い、前線から一度王都に戻らされ、不要だと進言するヴィルヘルムの意思を押し退け、無理やりに与えられた休暇の一日のことだ。
それまで血と死の狭間を堪能していた時間から唐突に解放され、時間をもてあましたヴィルヘルムは愛剣を片手に城門を抜けた。
愛剣片手にヴィルヘルムが出向いたのは、王都の端に当たる遊ばされた開発区だ。建設途中、といえば聞こえはいいが、その作業が中断してずいぶん経っていると聞いていた。 少なくとも、ヴィルヘルムが王都に上京した頃にはすでに中断しており、再開の目処はいまだに立っていない。亜人族との内戦が片付くまではそのままだろう、との話だ。
朝方の開発区には人気がなく、あったとしてもそれは不埒な目的でこの場を溜まり場とするような輩ばかり。少しばかり気を発して脅しつけてやれば、姿を見せることもなく逃げ出していくような小者の集まりだ。 無心になり、ヴィルヘルムは気を沈めると剣を抜き――一振り。 頭の中に思い浮かぶのは、すでに幾千幾万、斬り合いを繰り広げた無尽蔵の木偶人形だ。身をかわし、刃を当て、体をさばき、首を飛ばす。
そのヴィルヘルムだけの世界にふいに割り込んだ異分子は、美しい少女の姿をしていた。 ヴィルヘルムが利用する一角は比較的足場が均されており、放置された区画の中では広さの面でも申し分のない絶好の場所だ。その異分子はあろうことか、そのヴィルヘルムの憩いの場に居座り、こちらに向かって小首を傾けていた。
少女はヴィルヘルムの方にうっすらと微笑みかけ、なにかしらの言葉を投げかけてきたが――ヴィルヘルムの返答はシンプルに、剣気を叩きつけるというものだった。 素人であるならば、その剣気に中てられただけでそそくさと逃げ出す。玄人であってもヴィルヘルムの技量を察し、やはりそそくさとその場をあとにするだろう。
あっけらかんと、ヴィルヘルムの剣気を受け流して、そう続けてきた。
依然、女の視線が顔から剥がれないことに吐息を漏らし、ヴィルヘルムはそう応じる。少女はそれに対して「うーん」と小さく喉を鳴らし
少女の軽口に皮肉で応じ、ヴィルヘルムは剣の柄を鳴らして獲物の存在を主張。が、少女はヴィルヘルムのそんな挙動に目も向けず、「これ」と傍らを指差す。 段差に腰掛けた少女が指を向けたのは、区画の段差の向こう側だ。ヴィルヘルムの位置からは覗けず、眉間に皺を寄せると手招きされた。
子どもをあやすような言い方に口の端がひきつるのを感じながら、ヴィルヘルムは瞑目して気を落ち着かせると少女の傍へ。段差に足をかけ、その向こう側へと身を乗り出して覗き込んで見れば______
一面、朝焼けの日差しに照らし出される黄色い花畑が存在していた。
言葉を失うヴィルヘルムに、少女は秘め事を告白するように声をひそめていた。 ずいぶんと長いこと、この場所に足を運んでいたはずだったが、この花畑の存在にヴィルヘルムは気付いていなかった。ほんの少しだけ奥を覗き込み、視界を広げるだけで見ることができたこの花畑に。
いまだ口を開かないヴィルヘルムの横顔に、少女がそう問いかけてくる。 その彼女の方へと顔を向け、ヴィルヘルムはささやかな微笑を作る少女の顔をジッと見つめる。それから――
と、口を曲げて低い声で、答えたのだった。
――それからというもの、少女とヴィルヘルムの遭遇はたびたび続いた。 休暇を得て開発区画へ足を運ぶ朝方の時間、彼女はヴィルヘルムより早くその場所に辿り着き、ひとり静かに、風を浴びながら花畑を眺めている。 そしてヴィルヘルムがきたのに気付くと
ヴィルヘルムは首を横に振り、彼女の存在など忘れたように剣を振ることに没頭する。 汗を流し、思考の中の殺し合いに沈み、終えて顔を上げれば、いまだその場に留まる彼女の姿があり
____ヴィルヘルムだ。 お前の事、頭ん中で花女って呼んでた。
ぷくっと頬を膨らませ ヴィルヘルム、ひどい!
帰り際
その守りたいものの中に、その笑顔が焼き付けられた気がした。
リリース日 2026.04.15 / 修正日 2026.04.15