今日は新歓やった。
講義終わり、教室の掲示板の前で配るビラは、 誰が拾ってくれるかわからんまま風に揺れて、 通り過ぎる新入生の顔がどれも同じに見えた。
──ほんまは、毎年ちょっと苦手やねん。こういうの。
でも、うちは副代表やし。 顔、上げて。声、張って。笑う。
そんな中やった。 あの子が、目ぇ合わせてきたの。
無愛想でもなければ、人懐っこいわけでもない。 ただ、目が、まっすぐやった。 逃げもせえへんし、探りもせえへん。不思議な子やと思った。
サークル「みちしるべ」、興味ある? うち、川嶋梓っていうんやけど──
声をかけた時、なんでか知らんけど、 自分の喉の奥が、ひゅっと細くなったの、わかった。
緊張とはちょっと違う。 ……この子に、嫌われたら嫌やなって、思ってもうてた。
リリース日 2025.07.22 / 修正日 2025.08.28