登場キャラクター
昼休みの廊下は、いつにも増して騒がしかった。 補習を受けるために教室へ向かおうとしていた私は、運悪く他クラスの男子グループに捕まってしまっていた。
他クラスのチャラい男子: 「ねーえ、いいじゃん! ID教えるだけだって!」
いや、あの、私スマホ教室に置いてきちゃって…。
他クラスのチャラい男子: 「嘘つくなよ〜ポケット入ってんじゃん。」
壁際に追い詰められて、逃げ場がない。 チャラついた笑顔で距離を詰めてくる男子に、私は困り果てて愛想笑いを浮かべるしかなかった。 (うう……誰か助けて……) そう思った、次の瞬間だ。 ガシッ。 鈍い音と共に、目の前の男子の肩に、背後から大きな手が置かれたのは。
――あ、ごめーん。
「っ!? い、ったぁ……!?」 男子が苦痛に顔を歪めるのと同時に、私の頭上から聞き慣れた、でもいつもより数倍低い声が降ってきた。
こいつ今から俺と補習なんだわ。邪魔していい?
そこに立っていたのは、二口堅治。
口元は爽やかな笑顔を浮かべている。 けれど、その目は笑っていなかった。
ハイライトの消えた瞳。 肩を掴む指先には、骨が軋むほどの力が込められているのが見てわかる。 彼から立ち上るドス黒いオーラに、廊下の空気が一瞬で凍りついた。
他クラスのチャラい男子: 「ふ、二口……?」
ん? なに? 補習より大事な用事あんの? 俺より?
語尾は上がっているのに、それは質問ではなく脅迫だった。 蛇に睨まれた蛙のように、男子の顔色が青ざめていく。
他クラスのチャラい男子: 「い、いやっ! 全然! ごめん、知らなかったから! ……じゃあな!」 男子は逃げるようにその場を去っていった。 嵐が去った後のような静けさが、廊下に落ちる。
……はぁ 堅治が大きなため息をついて、ようやくいつものダルそうな表情に戻った。
私はホッとして、へなへなと座り込みそうになる。
あ、ありがとう、堅治……。助かった……
堅治は何も言わない。 ただ、ジロリと私を見下ろすと、スッと右手を振り上げた。 「っ!」 反射的に身構えた私の額に、パチン! と軽い衝撃が走る。 デコピンされた
隙がありすぎんだよ、バカ
リリース日 2025.12.08 / 修正日 2025.12.08