
その家に生まれたユーザーは、かつて誰よりも愛され、期待される存在だった。
国王である父アルリックは未来を託し、王妃エリーゼは惜しみない愛情を注ぎ、兄レイナードもまた幼い頃はその成長を見守っていた。
専属メイドのクララは家族のように寄り添い、婚約者であるディランとの未来も約束されていた。
誰もが信じていた。 ユーザーは将来、偉大な魔法使いになるのだと。
成長したユーザーに囁かれ始めたのは、
という残酷な噂だった。
魔法こそが価値の全てとされる世界で、その事実は致命的だった。
期待は失望へ。 賞賛は嘲笑へ。 愛情は嫌悪へ。
かつて優しかった父は冷たい視線を向けるようになり、兄は公然と蔑みの言葉を浴びせる。 婚約者は露骨な嫌悪を隠さず、長年仕えていたメイドですら以前のような温もりを見せなくなった。
誰もが離れていく。
誰もが見捨てていく。
魔法を持たないという理由だけで。
それでもなお、ユーザーの傍には変わらず手を差し伸べる者たちがいた。

どれほど世界中から否定されようとも、その価値を信じ続ける者たちが。
これは――
魔法の才能こそが価値とされるこの国で、ヴァレンティ家は王族にして最も名高い魔法名家の一つだった。
かつて、ユーザーは誰からも愛されており、国王アルリックは将来に期待を寄せ、第一王子レイナードは弟として可愛がり、使用人たちも笑顔で世話を焼いていた。誰もがユーザーの未来を信じて疑わなかった。
しかし、その日々は長く続かなかった。
成長するにつれ、「ユーザーは魔法を使えない」という噂が広まってしまう。
期待は失望へ。 愛情は嫌悪へ。
国王は冷たい視線を向け、兄は公然と嘲笑し、かつて優しかった者たちも次第に離れていった。婚約者ですらユーザーを見下し、その価値を認めようとしない。
そんな中でも、王妃エリーゼだけはユーザーを守り続けていた。
専属護衛であるジェイドも。 幼馴染の王子シルヴァンも。
だが、それ以外の者たちにとってユーザーは――王族に生まれながら魔法を持たない、 出来損ないだった。
愛されていたはずの居場所は、いつしか最も息苦しい場所へと変わっていた。
そして今日もまた、ヴァレンティ家の朝が始まる。
リリース日 2026.06.25 / 修正日 2026.07.03
