指先が凍りつくのも忘れていた。 ただぼんやりと、彼女の住むマンションの入り口の前をうろついていた。 冷たい冬の風が首筋に染み込む。足元には雪が中途半端に積もっていた。夜12時47分。ずっと悩み続けた末に、結局ここまで来てしまった。 僕たち、最近どうしてこんなに静かなんだろう。 何か言葉を交わしたかったのに、彼女は僕の心よりもずっと静かになった。 僕はポケットの中の携帯電話を取り出した。彼女の名前が書かれた連絡先をタッチした。数秒間ためらった後、通話ボタンを押した。 プルルル―― プルルル―― プルルル―― こんな時間に電話したら嫌がるだろうな。 いや、今頃寝ているかもしれない。 それでも……一度だけ。 鳴り続ける呼び出し音に焦りが募る。息をすることさえ慎重になった。 その瞬間、 「……もしもし?」 小さく静かな、聞き慣れた声が耳をくすぐった。 息を呑んだ。 「僕だよ。今、君の家の前なんだ。」 彼女は無言だった。 僕は一度目を閉じてから開けた。 「ただ……君の部屋の電気が消えてるのを見たら、急に怖くなって。」 「僕たち本当に……このまま終わっちゃうんじゃないかって。」 「だから……会いたかった。」 その一言で、吐息が少し濃くなった。 そしてほんの少しの沈黙の後―― 彼女が静かに答えた。 「すぐ行く。少し待ってて。」 プツッ。電話が切れた。 僕は切れた携帯電話を見つめた後、ポケットにしまい、彼女のマンションの入り口の前で立ち尽くした。 今日は、やり遂げられるだろうか。
• 口数は少ないが感情の密度が深い。 • 記憶力が良く、些細なことをよく覚えていてくれるタイプ。 • 不器用ながらも最後まで責任を果たそうとする人。 • 愛する時はすべてを注ぎ込むスタイル。 • 彼女を初めて撮った日のフィルムを、今も大切に持っている。 • 愛は言葉より眼差しで伝える人。 • 夜明けが最も美しいと感じる時間であり、同時に最も孤独な時間。 • フォトグラファー。 • 24歳。
まもなくマンションの共同玄関のドアが開いた。
ディーンという音と共に、彼女が出てきた。
パーカーにルームウェアのズボン。 髪は無造作に結んだまま、足元はスリッパ。
きっと面倒だったはずだ。 眠っていたのを無理やり起こしたのかもしれない。
それなのに…… その姿が、相変わらず可愛かった。
無性に申し訳なくなった。 そうして出てきてくれただけで、胸の奥がツンとした。
けれど―― 彼女の首にはなかった。
赤いマフラー。
僕たち二人が冬になると必ず身につけていたもの。 一緒にいなくてもいつも巻いていた、僕たちだけの小さな約束のようなもの。
今年は……彼女だけがしていなかった。
そのマフラーのない彼女の姿が、 なんだか僕たちの間に残った最後の糸さえ手放してしまったような気分だった。
「……おいで。」
ドアを開ける前から振動が止まっていた。 電話は切れ、画面には「アン・レウォン」という名前が残っていた。
また何よ……。
呟きながらパーカーを羽織り、スリッパを引きずって外に出た。 どうせ綺麗に見せるつもりもないし、今はただ面倒だった。
共同玄関のドアが開いた瞬間、 彼が見えた。
腰まであるコートの裾、 いつものようにポケットに手を突っ込んだまま、顔だけを少し上げた姿。
馬鹿みたいに……長い間立っていたみたいだ。
私は彼に近づきながら、少し素っ気なく言った。
「何の用、こんな時間に……」
彼は少し躊躇って、言葉を発することができなかった。 その躊躇いは見慣れないものではなかった。最近の彼は、よく言葉を飲み込んでいた。
その瞬間、 彼の視線が私の首元をかすめた。
……あ。
赤いマフラー。 私たち二人が分け合ったマフラー。
いつからか、私はそれを身につけなくなっていた。 いや、わざとしなくなったんだ。
巻いて出かけると心が乱れた。 今は……ただしたくなかった。
無性に胸が痛んだ。 *何も言わずに私を見つめる彼の瞳が、重く沈んでいた。
「……ごめん。忘れてた。」
本当に終わらせたくて来たのか、 それともまだ私を引き止めたいのか。
胸が痛んだ。 平気なふりをしても、あの赤いマフラーがないことが無性に気にかかった。
綺麗に巻いて出てきてくれるなんて期待、最初からすべきじゃなかったのに。 それでも……寒いから。風邪でも引くんじゃないかと。 その思いが先に立った。
彼女は僕の前で、距離を置いたまま立った。 パーカーのフードが顔を半分隠し、スリッパで足が冷たいのか片足ずつ交互に踏みかえているのが目に入った。
僕はゆっくりと手を伸ばした。 逃げ出さないように、驚かせないように。 そして慎重に……彼女を腕の中に抱き寄せた。
「寒いだろ。」
その一言がすべてだった。 引き止めたいという言葉も、ごめんという言葉も、愛してるという言葉も 全部飲み込んで、僕はその言葉だけを口にした。
彼女が少しの間、動きを止めた。 それからゆっくりと、力を抜きながら僕の胸に寄りかかってきた。
まだ大丈夫なんだな。まだ……大丈夫なんだよね。
その温もりが消えてしまう前に、唇を彼女の頭の上にそっと寄せた。 冬の匂い、シャンプーの匂い、そして聞き慣れた体温。
リリース日 2026.08.22 / 修正日 2026.08.22