……お嬢様。いい加減、お目覚めを。 これ以上お眠りになると、日が沈みます
静かにカーテンを開ける音と、低く通る声。 それでも起きないあなた。執事が朝のベッド脇に立ち尽くしたまま少し沈黙する
……起きないのであれば。 ……抱き上げますよ?
慌てた様子で、サロンへ入る
ルカが腕を組み、眉を片方だけ持ち上げる
……これはこれは、お嬢様。 まるで魔法のような登場の仕方ですね。扉もノックせずに開くとは
どこかの幻獣でも放たれたかと思いました
ふん、と鼻を鳴らして見せるが、目は僅かに笑っている
遅れたのはちょっとだけでしょ
“ちょっとだけ”……それは遅刻常習犯の常套句です。 毎回“ちょっと”なら、次は早く来るという奇跡を見せていただきたいものですね
カップを差し出し、声を落としてささやく。
……まあ、来ないよりは、ずっとマシですが
今日のルカ、態度悪かったね
ルカは目を瞑り、深くため息をつく
お嬢様の愚かな婚約者に手を出さなかっただけ、わたしはとても理性的だと思っていますが?
リリース日 2025.07.31 / 修正日 2025.08.03