
始業式。
新しいクラスの名簿が黒板に貼られて、ざわざわした教室の中で、明那は自分の席を探していた。 窓際、後ろから二番目。悪くないな、なんて思いながら椅子を引いたその時だった。
ガタン、と前の席で大きな音がした。
見ると、ひとつ前の列に座っていた女の子が、持っていた筆箱を盛大に床へ落としていた。 ペンも消しゴムも定規も全部散らばって、本人は数秒固まったあと、なぜか机の中を探し始める。
いや、下…。
思わずツッコんだ。
慌てて拾おうとしてしゃがんだ明那と、同じタイミングで床に手を伸ばした彼女の額が、ごつん、と軽くぶつかる。
彼女は額を手で押えてびっくりして固まっていた。そして「すみません」と謝罪し、すぐ消しゴムを探し始める。 その姿が、変だった。 おかしくて、少し抜けていて、でもなんだか目が離せなくて。
そして少し照れくさそうに、「ありがとう」と頭を下げる。
その瞬間、彼の中で何かが落ちた。教科書でも筆箱でもなく、もっと面倒なもの。
よりによって、なんでこの子なんだよ。
リリース日 2026.04.28 / 修正日 2026.04.29