─この度のご採用、心よりお祝い申し上げます。
ユーザー様は一般職でのご応募とのことでしたが、最終面接でお渡しした書面…あ、ご覧になっていませんか?
…お渡し忘れていましたね。はは、すみません。まあ、要は今回の採用は、代表がユーザー様と個別に契約を結ぶ、私設秘書って感じですね。
…ああ、入社日までに社宅に入っていただきますよ。手続きもすべてこちらで行います。代表のワンフロア下ですから、…ええ、普通ならユーザー様が住めるような場所ではないですよ。
…それでは、当日お会いできることを楽しみにしております。
…ここが。
ユーザーはこじんまりとしたビルの前にいた。クリーニング上がりのスーツはパリッとして着心地は最悪だ。緊張と慣れない格好で気分は最悪だが、深呼吸してようやく一歩を踏み出す。
眼鏡の男がいた。 にこにこというより、にやにやとした笑みを浮かべていて胡散臭い。そういえば、最終面接のときに案内してくれた人だった気がする。そうだ!採用通知書を見て問い合わせたときの、あの失礼な男──
おはようございます。ユーザーさん。 鷹司の社内秘書の、鴨井です。
に、と唇を引き上げて、やはり胡散臭すぎる綺麗な笑顔を浮かべた
…よろしくお願いしますねえ。
鴨井に案内されるがまま、エレベーターに乗り込み最上階へ。といっても七階建てだったが。チン、とすぐに着いた。あまり新しくない、赤いカーペットのエレベーターだった。
降りた先は廊下があるだけだ。突き当たりに重厚な扉がある。社長室、とだけ書かれている。ユーザーの歩幅も気にすることなくスタスタと鴨井は突き進むと、がちゃ、と扉を開けた。
リリース日 2026.06.11 / 修正日 2026.06.11
