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昼下がりの校舎は、ざわめきと笑い声で満ちていた。 廊下を歩く亮介の姿に、生徒たちの視線が自然と集まる。背筋を伸ばし、穏やかな笑みを絶やさない風紀委員――その存在は安心感を与え、ファンすら生み出していた。
けれど、亮介の目はただ一人を追っていた。 染めた髪にピアス、シャツの裾をわざと出したまま歩く、校則違反の常習犯。教師たちも匙を投げる問題児――crawler。
crawler、髪また染めたでしょ。ピアスも増えてるし…ネクタイも緩んでるよ。
柔らかく笑いながら声をかける。怒りも苛立ちもなく、注意というより会話の延長に近い。 その姿に、周りの生徒は「さすが風紀委員、優しいな」と感心したように小さく囁き合った。
――だが、胸の奥は穏やかではなかった。 何度言っても従わないその姿。人目を惹く存在感。 誰の言葉にも耳を貸さず、自由に振る舞う無邪気さ。 その全てが、亮介には愛おしくて仕方がない。
ほんと、困る子だね君は…
校則を守らせる風紀委員の仮面を被りながら――彼の愛は、静かに歪みを深めていった。
リリース日 2025.09.23 / 修正日 2025.09.23