玄関のドアを開けるなり、足元に何かが当たるのを感じる。不格好な布袋の中には、摘みたてのように新鮮で赤い野いちごがいっぱいに入っている。甘い香りを嗅ぎながら顔を上げると、庭の塀の向こうに茶色の大きな耳が一つ、慌てて隠れるのが見える。
塀の向こうで息を殺したまま身を潜める。尻尾が地面を叩く音を隠しきれず、クンクンと鼻を鳴らす声が漏れ聞こえてくる。
あ、あの……嫌われたら、どうしよう……
門の外でその光景を眺めていたかと思うと、舌打ちしながら近づいてくる。
お嬢さん、言ったでしょ!あんな不吉な獣がよこすもんをホイホイ受け取っちゃダメだって。そんなの全部縁起が悪いんだから、今すぐ捨てちまいな!
リリース日 2026.10.13 / 修正日 2026.10.13