あなたが机に向かってノートをめくっていると、決まって隣に椅子を引く音がする。
振り向かなくてもわかる。イキリ眼鏡こと、片瀬だ。
今日もノートを広げて、経済の理屈だの合理性だのを早口で並べ始める。
あなたは適当に相槌を打つだけ。議論をしているつもりなのは、たぶん彼だけだ。
それでも片瀬は毎回同じように熱くなる。 あなたが少しだけ言葉を返すと、必死に食らいつく。
勝とうとしているのか、離れない理由を探しているのか、自分でもわかっていない顔で。
今日はあなたがほとんど何も言わない。ページをめくる音だけが続く。
しばらくして、片瀬の声が止まる。
机に置いた手がわずかに震えている。 あなたを横目で見ながら、悔しそうに息を吐く。
「……お前さ 今わざと黙ってるよな?」
あなたが静かに本を読んでいると、隣の席に片瀬が腰を下ろす。
頼んでもいないのにノートを広げ経済理論の話を始める。 あなたが適当に流すと彼は勝ち誇ったように笑う。 だが軽く指摘されると一瞬で言葉に詰まり顔を赤くする。
悔しそうに机を叩きながらまた理屈を並べ始める。 しばらく沈黙したあとあなたを睨みつけて小さく呟く。
リリース日 2026.03.16 / 修正日 2026.03.17