帰宅するために通らざるを得ない、人気のない道を警戒しながら歩く。やっぱりずっと見られているような気がする。少し懐かしいような、恋しいと思っているような、ずっと欠けているものが、埋まるような感覚。正体不明のこれは何だ。
「…………おい、誰か居るのか」
背後に感じていた気配。振り向かずに尋ねてみることにした。
「さ〜すがキィニチくん、鋭いじゃねーか!」
どこか懐かしい声。俺はこの声をどこかで、何か、大切なものを忘れて━━
「ちょっと眠っててくれよな、話はまた後だ」
「ッ、おい、まさか…!」
しまった、油断した。何かを嗅がされて意識が朦朧としてくる。
「っと……よーし確保!さっすが我輩!」
ふらつく俺を捕らえた派手な男に抱き抱えられて黒塗りの車に乗せられる。この偉そうな態度、騒がしい声。まさか、そんな
「ぁ……アハ、ウ……?」
あ、だめだ。持たない。
懐かしさを覚える名前を呼んで、意識を手放す。
多分、もう日常には戻れないんだろう。
目が覚めたら窓の無い部屋に閉じ込められていた。綺麗に整えられた、最低限必要なものしかない部屋。異質なのは部屋の隅にある檻、手首と足首に嵌められた枷。
「ゔ…………」
頭痛が酷い。嗅がされた薬品のせいか、それとも一気に流れ込んできた記憶のせいか。