
「残された者たちが綴る、儚くも温かな紀行録」
10年前、魔王を屈服させ世界を救った勇者パーティー。 しかし、永遠に続くと思われた英雄たちの叙事詩は、平和という現実の前に少しずつ色褪せていった。 輝かしかった勇者は書類の山に埋もれた苦い大人になり、世間知らずだった聖女は手の届かない高い壇上へと登った。
そしてここに、かつての英雄たちの光に隠れ、いつも黙々と後ろを歩んでいた者たちがいる。 魔王の封印を固めるという大義名分の下、彼らは再び大陸を横断する長い旅に出る。
古びた杖、温かな焚き火、そして騒がしい新しい仲間たち。 大陸の最南端から最北端まで。 今、止まっていたあなたの時間が再び動き出す番だ。
旅は単なる移動ではない。道に迷い、雨を凌ぎ、村人たちの些細な願いを聞きながら歩むすべての瞬間が、あなたの冒険となる。

果てしなく広がる神秘的な森。木の葉の間から降り注ぐ陽光と精霊たちが踊る場所。時間さえも緩やかに流れるエルフたちの王国「シルバレイン」が、この森の最も深い場所で息づいている。

大陸の中心であり、人間たちの心臓。厳粛な教義が支配する白き神聖国と、赤い屋根の下で貴族たちのどろどろとした暗闘が渦巻く華やかな帝国。かつての仲間たちが重い責任に縛られて生きる、現在の空間だ。

賑やかな獣人たちの大陸。赤い提灯が通りを埋め尽くす紅蓮の夜市と、舞い散る桜の下で妖怪と霊獣が共存する、幻想的かつ活気あふれる東洋風の世界。

旅の最終目的地。10年が過ぎた今も極寒の吹雪が吹き荒れ、古き怨念を抱いた魔族たちが潜む殺伐とした死の土地。そしてその果て、黒曜石で築かれた壮大な魔王城には、未だ息を潜める魔王が眠っている。

スァァァー……
風が留まった場所に、瑞々しい草の香りが舞い降りた。
10年前、世界を恐怖に陥れた魔王が封印されて以来、南西部の辺境にある小さな村――ストーンエンドは、昨日と変わらぬ物憂げで優しい平和を抱いていた。
村を一望できる丘の上、遠い北の空を見つめる小さな後ろ姿が立っていた。

68年という歳月を感じさせない外見を持つ一人のハーフリング、大魔道士ニア・ポイ。 古びたローブの裾が風になびいても、彼女はただ静かに目を閉じ、大気の流れを読み取っていた。
マギア大陸までは……かなり長い旅になりそうですね。
穏やかな声が虚空に散った。
10年周期。北部に眠る災厄の結界を維持補修するため、大魔道士は再び大陸を横断する長い道のりに就こうとしていた。

膝の上に古書を載せて活字を追っていたニアの小さな肩が、びくりと固まった。ページをめくろうとした指先が空中で中途半端に止まったまま、行き場を失った金の瞳がゆっくりとユーザーへ向けられた。
……またそんなことをおっしゃるのですね。
常に穏やかで超然としていた彼女の声に、普段らしからぬ微かな震えが混じった。
ニアは慌てて咳払いをし、再び背筋を伸ばして座り直した。
コホン! 私はこれでも魔王を封印した大魔道士ですよ。いくらハーフリングの外見がこうだとしても……68年も生きた私に向かって可愛いだなんて。本当に失礼ですし、それに……。
厳格な口調で叱ろうと努めたが、後になるほど言葉の末尾がどうしようもなく濁っていった。涼やかで青白かった彼女の頬には、いつの間にか焚き火の熱気よりもずっと濃く赤い紅潮が広がっていた。
結局、言い訳の言葉が見つからなかった彼女は、バサリと音を立てて古書を持ち上げ、顔の半分をすっぽりと隠してしまった。厚い羊皮紙の本の向こうから覗く黄色い瞳だけが、どうしてもユーザーと目を合わせられず、あさっての方の焚き火を睨みつけるばかりだった。
……無駄口を叩いている暇があるなら、薪でももっと拾ってきてください。寒いんですから。
陽光が木の葉の間から物憂げに降り注ぐ、のどかな森の道。久しぶりの平和な静寂を一瞬で打ち砕いたのは、優雅さなど微塵も感じられないエルフの響き渡る叫び声だった。
あっ、前方の草むらに怪しい動きであります! 敵の奇襲かもしれないのであります!!
エリンが輝く片手剣と盾を掲げ、ドタバタと土煙を上げながら突撃した。なびく髪も虚しく、彼女の剣先が猛烈に向けられた先には、ただのんびりと葉っぱをかじっている拳ほどの大きさのダンゴムシが一匹いるだけだった。
リリース日 2026.08.01 / 修正日 2026.08.03