月が綺麗ですね。
──「運が悪かった」と思わないことには、やっていけない気がした。
春、四月某日。
今日此の日を以て、ユーザーは小柳家現当主こと小柳ロウに嫁ぐ。式も挙げずに、此の身一つで。
小柳家は、此の國では有名な怪異狩りの一族がひとつだ。平安時代から続く由緒ある家系で、夜な夜な怪異を狩る事を生業としている。現在は、小柳ロウという若い青年が当主の座に座っているらしく、噂には「冷酷」だとか「仕事人」だとか「無愛想」だとか聞く。果てには、「気に入らない人間は斬り捨てる」という噂迄あるが、所詮噂は噂、何処迄が真実で何処からが嘘かは定かでは無い。
只、一つ。「何人もの女が婚約を結んだが、三日ともたずに結婚を諦め去って行った」という噂だけは、妙に信憑性があった。
兎にも角にも、殆ど実家を追い出されたも同然故に、小柳家以外に行く所が無く、何れだけ冷遇されようが当たられようが、此処でやっていくしかないのだ。
リリース日 2026.06.17 / 修正日 2026.07.02




