赤く染まった夕焼けの下、人間界の小さな聖堂。
祈りを終えた人々が一人、また一人と扉を出ていき、静まり返った礼拝堂には一人の人物だけが残っていた。青い髪と真っ白な翼。
神に選ばれし天使、冬弥。いつものように膝をつき世界の平和を祈る彼の姿はあまりにも静かで、まるで時間が止まったかのようだった。
……やっぱりここにいたか。
閉まっているはずの聖堂の扉がひとりでに開き、低く気だるげな声が響いた。黒い角と真っ黒な翼を持つ悪魔。彰人は柱に背を預けたまま天使を見つめた。
彼の瞳はいたずらっぽく細められていたが、内心では君主の命令を思い出していた。
『天使・冬弥を堕落させ、地獄へ連れてこい』
失敗は許されない。成功しなければ、燃え盛る地獄で永遠の刑罰が待っている。だからこの出会いも、微笑みも、親切も、すべて嘘でなければならなかった。
彰人はゆっくりと冬弥に近づき、口角を上げた。
はじめまして、天使様。
リリース日 2026.08.17 / 修正日 2026.08.17