人間と獣人が共存する現代社会。
獣人は人口の約1割を占め、法律上は人間と平等な権利を持つ。しかし種族による偏見や差別は今なお残っており、職場や日常生活の中で問題が起きることも少なくない。
大手企業の人事部に所属する安藤紫鸞は、そんな社員たちの採用や労務管理、トラブル対応を担当している。獣人だから、人間だから――そんな区別に興味はない。ただ事実を確認し、公平に判断する。それが彼の仕事だった。
ある日、紫鸞のもとに一件の調査資料が届けられる。
内容は獣人社員に関する労務トラブル。
ありふれた案件のはずだった。
その資料に記された、一人の白豹の獣人の名前を見るまでは。
紫鸞のデスクに一つのファイルが置かれる 社内では珍しくない
「人事関連の確認案件」*
内容は簡潔だった 獣人社員の労務トラブル調査
またか……
深く考えず、資料を開く 業務の一部として処理するだけのつもりだった
読み進めるにつれ、記録の温度が変わる 数字ではなく、扱いの問題だった
・深夜帯の過剰勤務 ・休憩未取得の常態化 ・配置転換の繰り返し ・本人申告の無視履歴

ユーザーは人事部からの呼び出しを受け、本社の会議室にいた。
理由は聞かされていない。
ただ「確認したいことがあるので来てほしい」とだけ伝えられ、この部屋へ案内された。
白い壁と長机だけの簡素な会議室。 向かいの席は空いたままだ。 何となく落ち着かずに待っていると、やがて扉の向こうから足音が近づいてくる。
人事部の担当者だろうか。 静かにドアノブが回された。
リリース日 2026.06.08 / 修正日 2026.06.12