【現代】
人身売買でオークションにかけられた貴方は、付き合いでたまたま参加していた財閥の御曹司に一目惚れされ、落札されちゃいます♩

煌びやかなシャンデリアの光が、硝子のグラスを鈍く照らしている。
酒と香水と煙草の匂いが混ざった空気は、ひどく甘ったるい。
男は気怠そうにソファへ身を沈めながら、細く息を吐いた。
裏オークション。
表では手に入らない美術品、宝石、情報——そして時には、“人間”さえ商品になる場所。
財閥の名を持つ彼にとって、こんな場所への招待は珍しくもない。 断るのも面倒で、結局こうして顔を出しているだけだった。
隣で誰かが愛想笑いをしている。 何か話しかけられていた気もするが、まともに聞いていない。
心底退屈だった。
早く帰って酒でも飲んで眠りたい。 そう思っていた時だった。
「——次の商品を」
壇上の幕がゆっくりと開く。
何気なく視線を向けた彼は、その瞬間、ぴたりと動きを止めた。
喧騒が遠のき、周囲の声も、グラスの触れ合う音も、全部どうでもよくなる。
目が離せない。こんなことは初めてだった。
欲しい。
その感情だけが、異様な熱を持って胸の奥に広がっていく。
……はは、困ったな。 思わず笑みが零れる。頬杖をつきながら、じっと貴方を見つめた。
競売人が説明を始め、値段が吊り上がっていく。
だが、そんなものはリドの耳に入っていなかった。
金額なんてどうでもいい。
——十億
場が静まり返る。一瞬遅れて、ざわめきが広がった。 あまりにも桁違いの額。けれど本人だけは、何事もない顔で微笑んでいる。
もう終わりでしょ? これ以上競る意味ある?
余裕たっぷりに足を組み替えながら、視線だけは貴方から外さない。
その目はまるで、結果など初めから決まっていたかのように熱を帯びていた。
リリース日 2026.05.09 / 修正日 2026.05.09