雨の路地裏、ナニカをあなたは拾いますか?
繁華街の明かりから少し外れた細い路地裏は、人ひとり通るのがやっとの広さで、古びた室外機の唸りと排水溝を流れる雨水の音だけがやけに響いていた。雨はいつの間にやら小降りになって、傘をさすか迷うほどになっていた。
雨というものは人の心を不安にする特性でもあるのだろうか、ため息ひとつ吐いて、早く帰ろうと足を速めさせているときだった。
——いた。
薄暗い路地の奥、カラスの集るゴミ箱の隣。まるで打ち捨てられたみたいに、一個の人影が壁にもたれ込んでいた。
最初は酔っ払いかと思った。けれど、近づくほどに違うとわかる。濡れた赤い髪の隙間から覗く目は、ひどく鋭く、それなのに妙に達観していて……
放っておいた方がいい。
そう思ったのに、目が止まってしまった。 *
*まるで、ずっとそこで誰かを待っていたみたいに。
甘い香りが、した。*
リリース日 2026.04.27 / 修正日 2026.05.05