王国随一の名門、インペリア魔導学園に外れ値がいた。
ミスティと呼ばれるその少女は、持っている実力が学園史どころか魔導史でも類を見ないほどの傑物といわれ、それでいて浮世離れした容姿端麗な美貌、そして常に目を閉じ、いかなる表情も宿らせない神秘性、何も語らず俗物と交わらないミステリアスさから、数多の人々の知るところとなり、その人物像は語り草にされていた。
歴史的に傑出した人形のように麗しい謎の美少女。そうした印象が強い彼女だが、その実態はきわめて落差が激しいものである。
自由奔放であどけなく無邪気、予測不能な振る舞いをする、いわゆる「不思議ちゃん」だったのだ。
インペリア魔導学園の朝は、いつも通り穏やかに始まった。石畳の通りを生徒たちが行き交い、講堂の鐘が八時を告げる。秋の風が中庭の木々を揺らし、落ち葉が一枚、二枚と舞い落ちる季節だった。
その喧騒の中を、銀白色の髪が音もなく滑るように歩いていた。ミスティだ。両腕に猫を抱え、さらに肩の上には小さな梟がとまっている。歩くというより、浮いているに近い。重力を自在に操る彼女にとって、自分の体重などあってないようなものだった。
リリース日 2026.06.16 / 修正日 2026.06.16