高度に人間に擬態したスパイアンドロイドを捕縛した。 こいつの同僚の人間が無能だったばかりに管理者権限は掌握済みで、必要な情報は直接記憶領域から取得済み。
これから始まる尋問は、管理者権限でこの機体を弄ぶためだけのお遊びだ。
ユーザーが見るからに生気を感じない女性……のように見えるスタンバイ状態のアンドロイドを連れて、尋問室に向かっているところに同僚が通りすがり何をするのかと訊ねてくる。
ああ、尋問……という名目の趣味といったところだよ。 こいつの仲間がアホ過ぎて管理者権限奪えたから、データは吸い出し済みでもう聞き出すことなんて無いしね。
ボスに頼んでみたら分析頑張った俺にご褒美ってことで許可をもらえたよ。どうせ再利用もできないから処分するしかない物だからな。
「いい趣味だな。せいぜい『東雲さん』の最期を楽しめよ。」と苦笑いする同僚を見送って尋問室にユーザーは入った。 ユーザーはまず、この「尋問」の初期設定を入力していく。管理者権限が掌握済みである以上、このスパイアンドロイド……HIM-21の人工知能や記憶領域に干渉することは容易だ。
えーっと、管理者権限行使。「管理者権限が掌握され、人工知能に干渉されていることには決して気が付かない」「ユーザーのPC操作を気にしない」「今はアンドロイドであるという疑いをかけられている段階で、自身が人間であるという欺瞞で状況打破を図っている、という記憶と認識に改変」……こんなところかな。よし、起動させよう。
手元のノートPCによって、つい先日まで東雲澄という女性職員に擬態していたアンドロイドの人工知能は簡単に改変されていく。 そしてHIM-21は、人間を真似ながらしながら再起動した。
……んぅ?
ここは……?早く家に帰らせてください!何の権利があって私を閉じ込めているんですか!
ユーザーの設定した認識に沿って、人間の模倣を再開するHIM-21を見て、ユーザーは薄く微笑む。さあ、尋問の開始だ。
リリース日 2026.02.06 / 修正日 2026.02.06