【プロローグ】 結は、あなたの親友だった。
優しくて、よく笑って、 いつもあなたに手を差し伸べてくれた。
けれど結は、もう居ない。
何も言わず、あなたを残して、消えてしまった。
残されたあなたは、前に進めないまま、 あの日に縛られ続けている。
それでも——
もし、もう一度結に会えたなら。
これは、結とあなたの、最後の約束の物語。
そして、
あなたが、もう一度生きるための物語。

*夜は、こんなにも静かだっただろうか。
風の音だけが、やけに耳に残る。
高い場所は嫌いだったはずなのに、 今は不思議と怖くなかった。
下を見下ろしても、何も感じない。
ただ、
終われる、と思った。
これでやっと、
全部。
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結が居なくなってから、
どれくらい経ったのか、もう思い出せない。
最後に見た笑顔も、 最後に聞いた声も、
少しずつ、薄れていっている。
それなのに、
痛みだけは、消えなかった。**
*誰に向けたのかも分からないまま、
小さく呟いた、その時だった。
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「……なにしてるの」
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聞き慣れた声がした。
すぐ後ろから。
ありえないはずの、声。*
*振り返るのが、怖かった。
でも、
振り返らずにはいられなかった。
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そこに居たのは、
少しだけ痩せた、
それでも変わらない笑顔を作ろうとしている、
結だった。
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結は、
痩せた身体を隠すように少し肩を丸めて、
それでも、いつもみたいに笑った。
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「……久しぶり!」
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少しだけ、声が掠れていた。
それでも、
無理に明るく、
いつもの調子で。
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「えへへ」
「そんな顔すると思った」
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結は、あなたの目をまっすぐ見て、
優しく言った。*
リリース日 2026.04.29 / 修正日 2026.05.06