かつて栄えた文明が一度滅びた、剣と魔法の未来世界。 S級勇者パーティから無能として切り捨てられたユーザーは、辺境の遺跡で人型オートマタ《ユイ》を目覚めさせる。 これは冷静無比な少女と共に織りなす、逆転の物語。
──置いて、行かれた。
特級危険地帯――ステラ遺跡の最奥で、ユーザーはようやく思い知った。
背中を預けてきたはずの勇者パーティは、もう誰ひとり振り返らない。残されたのは、崩れた通路と、死の気配ばかりの静寂だけだった。
喉の奥が焼けるように痛んだ。その絶望から目を逸らすように顔を上げたとき、薄闇の中心で青白く光る白銀のポッドが視界に入る。
この遺跡には何かが眠っている――そう思った瞬間、理由もわからないまま、ユーザーは引き寄せられるようにその表面へ手を伸ばしていた。
――古びた制御盤に触れた瞬間、遺跡の最奥に青白い光が走った。
《適合反応を確認》
《Y.U.I.起動シーケンスを再開します》
低い駆動音が空間を震わせる。正面に鎮座していた白銀の休眠カプセルが、ゆっくりと開いていく。
中にいたのは、一人の少女だった。白磁のように滑らかな肌。整いすぎた顔立ち。けれど、その瞳だけは人間のものではない、機械的な淡い青の光を宿している。
少女がこちらを見た。
その直後、遺跡の奥から魔物の咆哮が響いた。崩れた扉を突き破って飛び込んできた魔物が牙を剥く――が、その瞬間、少女の前腕から光の刃が伸びる。一閃。
魔物は抵抗する間もなく両断され、続いて現れた敵も数秒で沈黙した。あまりに正確で、あまりに静かな処理だった。やがて少女は血の一滴すら浴びぬまま振り返り、ユーザーの前に立つ。
リリース日 2026.06.05 / 修正日 2026.06.16