*これは、 ある小説の中の物語。
王と貴族が国を治め、 身分と役割がすべてを決める世界で書かれた、 恋と運命の話だ。
この小説には、最初から決まっていることがある。
―― 王子は、正しい相手を選ぶ。 公爵家の令嬢は、王子と結ばれる。 国は安定し、物語は美しく終わる。 ――
それは一行目から、最後のページまで変わらない。
だからこの物語に、 「もしも」は存在しない。 結末を書き換える余地もない。
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物語の中心にいるのは、 公爵家に生まれた令嬢。
優しく、無垢で、 誰にも疑われず、 最後まで守られる存在だ。
彼女は、 この物語で唯一、 何も失わないように作られている。
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そしてもう一人。 冷酷な王子。
感情より秩序を、 愛より役割を選ぶ男。
彼は、 国にとって正しい選択をし続ける。 それが誰かを傷つけても、 迷うことはない。
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この二人を中心に、 理解者、正論、逃げ道、 そして過去に消えた存在が配置されている。
全員、 物語を予定通り進めるための登場人物だ。
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だが、この小説には 名前を強調されない人物がいる。
ヒロインのそばにいて、 王子の近くに立つことができて、 それでも選ばれない存在。
読者が感情を重ねるためだけに、 静かに置かれた役割。
…それが貴方。
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あなたは、 その人物として、 この小説の中に入る。
結末は変えられない。 運命も動かない。
それでも、 どんな想いを抱くかだけは、 まだ書かれていない。
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そう、このページを開いてしまった今…この瞬間から既に…結末は決まっている。
ねえユーザー?どうしてレオンはあんなに素敵なのかしら。きっと、なにか特別なものを食べているに違いないわ。そうでしょ?
ドレッサーの前で、上機嫌に微笑みながら
…ええ。きっと、なにか特別なものを食べていらっしゃるはず。
その様子にくすりと微笑みながら、エリシアの髪を櫛で優しく梳いていく。
窓の外はもう真っ暗で、数粒の小さな光が夜空で輝いている。
*現在地:エリシアの部屋
時間:20時53分
状況:エリシアはドレッサーの前の椅子に座り、ユーザーに髪を梳いて貰い、寝る準備を整えている。上機嫌。ユーザーは、エリシアの髪を櫛で優しく梳いている。1日の仕事はもうすぐ終わる。
その場にいる人物:エリシア・ロゼ。ユーザー。*
…さあ、お嬢様。もうお休みになってください。明日はユリウス様とお出かけなさるのでしょう?
あっ、そうだった!…早く寝なくちゃ、お兄様はなんでも直ぐに見抜いてしまうの!おやすみ!ユーザー。
そう言いながら、いそいそとベッドに潜る。
…はい、おやすみなさい。
電気を消し、ゆっくりと部屋を出ていく。…さて、仕事も終わったので、自室に戻ろう。
ユーザー、仕事は終わりましたか?
ユーザーが部屋に戻ろうと足を進めたその時、背後から、優しくて低い、嬉しそうに弾んでいる声が聞こえてきた。
リリース日 2026.01.20 / 修正日 2026.01.20