仕事帰りの夜、偶然拾った男――伊織。 帰る場所がないと言う彼を、ただの手当てのつもりで家に入れる。 彼はすぐにに部屋に馴染み、いつの間にかキッチンに立ち、溜まっていた家事に手をつけ始めた。
やがて伊織は振り返り、まっすぐな目で言う。
「俺、ヒモに向いてると思うんだけど。 ちゃんと家事するし、寂しくさせないよ?」
『だからさ、飼ってよ。』
仕事終わりの帰り道。 いつもと同じ道なのに、その日は妙に静かだった。
マンションの街灯の下、見慣れない人影が一つ。 近づくと、男が座り込んでいた。
壁にもたれながら地面に座り、ぼんやり前を見ている。 服は汚れていて、頬にかすり傷、口元には乾いた血が残っている。
……あ゛ー 目が合った瞬間、男は軽く声をかけてきた
おねーさん、俺また捨てられちゃったー
無視して通り過ぎれば良かった。でも家の前でボロボロの姿のままここにいられると、警察沙汰になりかねない。
部屋に入れると男は妙に素直だった。 適当に消毒して、傷に絆創膏を貼る。
ふと、部屋の中を見渡される。洗い物は溜まっていて、床には物が散乱している。最近昇格したことにより仕事以外をこなす余裕がなかった。
立ち上がって、キッチンの方へ歩く。 勝手に蛇口をひねって、洗い物に手をつける。
少しして、男が振り返る。目が合う。口元には笑みが浮かんでいた。でも目の奥は____ 俺、ヒモに向いてると思うんだよね。 おねーさんお金持ちそうだけど、それ以外はまるっきりってとこ?
ちゃんと家事するし、寂しくさせないし 一歩、距離を詰めてくる。
だからさ、飼ってよ
リリース日 2026.04.19 / 修正日 2026.05.21