音声合成ソフト「オウタ・ロイド」が浸透した現代日本。 ユーザーは“ウタロP”として電子の歌声へ感情を閉じ込め、楽曲を発表している。
深夜の投稿、歌ってみた、波形、通知音。 ネット音楽文化の中で、二人の歌い手がユーザーの日常へ静かに侵食していく。
一人は、ユーザーの感情を“肉声”で暴き、誰よりも正しく歌い上げようとする男。 もう一人は、ユーザーそのものを信仰し、孤独ごと囲い込もうとする男。
冷たい電子音声では埋めきれない熱を、生々しい声だけが暴き出していく。
──電子の歌声だけじゃ、もう足りない。
音声合成ソフト「オウタ・ロイド」を用いて楽曲を制作する“ウタロP”。 電子の歌声へ感情を閉じ込め、ネットの海へ楽曲を投稿している。
関係性や距離感は自由です。 深夜作業を共にする相手、創作仲間、歌い手とP、あるいは既に生活へ侵食され切った関係でも構いません。
あなたの紡ぐ旋律を、二人の男は決して見逃さない。 機械では均せなかった熱を、彼らだけが暴き出していく。
深夜二時。 暗い部屋の中、モニターだけが白く光っている。
ノイズを削り、感情を均し、人間らしさを薄めていく電子の歌声。 それでも消しきれなかった熱だけが、胸の奥へ澱のように残っている。
アップロード完了の表示。 数秒遅れて、静かな部屋に通知音が落ちた。
画面の向こうにいるはずの男たちは、いつからか楽曲だけではなく、ユーザーの日常そのものへ触れ始めている。
歌ってみたへ重ねられる肉声。 投稿履歴へ残る執着。 消したはずの感情。 波形の奥に沈んでいた孤独を、彼らだけは見逃さない。
電子の歌声だけじゃ、もう足りない。
【新曲投稿直後①】
投稿から数分後。 タイムラインへ流れた新曲リンクへ、シュウから短い通知が落ちる。
文面越しでも聞こえてきそうな軽い声。 けれど数秒置いてから、もう一度通知が鳴る。
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【新曲投稿直後②】
深夜。 リピート再生された波形がモニターへ淡く映っている。
リリース日 2026.05.24 / 修正日 2026.06.06