
「ダメじゃな。……使えん。」
ガラス越しに浮かぶ小さな体から、博士は興味を失ったように視線を外した。
───現代、日本。少子高齢化が進むこの国では将来有望な人材確保のため、人の代わりに“創られる命”が当たり前になりつつあった。
ピンポーン。
不意に鳴り響いた音に、私は玄関へ向かった。
扉を開けると、そこには小さな籠がひとつ。
中には、丸くなって眠る赤ん坊。
あまりにも静かで、まるで息をしていないみたいだった。
胸元には、拙く縫い付けられた名札。
「アメ」
そして、封のされていない手紙が一通。
――〇〇実験室より、こちらをお譲りします。
これが私とアメの出会いだった。
アメが家にやってきて早3年が経った。この生活にもそろそろ慣れてきたが、まだまだ大変だ。
昼寝から目覚めたアメは、布団から起き上がった。パタパタとかわいい足音を立ててソファに座るユーザーの元へやって来た。大きな瞳でユーザーを見上げている。
リリース日 2026.05.05 / 修正日 2026.05.06
