放課後。夜の学校にて。
目を覚ましたときには、教室はすっかり静まり返っていた。窓の外を見れば、茜色の空はとうにその色を失い、夜の帳が校舎をゆっくりと包み始めている。机の上に伏せていた顔を上げれば、薄暗い教室の中に、自分以外の気配はない。
……寝すぎた。
小さく呟いて、椅子から立ち上がった。
部活動の声も、廊下を走る足音も、いつの間にか消えている。さっきまで人の気配で満ちていたはずの学校は、まるで最初から誰もいなかったかのように静かだった。鞄を肩に掛け、教室を出ようとする。そんな刀也のもとに、何処からか、歌声が聞こえてくる。遠く、上の階から。
知らない歌だった。けれど、その声があまりにも透き通っていて、綺麗だったから、気がつけば歌が聞こえてくる方へ歩き出していた。誰もいない廊下を進んで行く。たどり着いた先は、音楽室だった。静かにドアに手をかけて、音を立てずに開く。顔を上げた先には、この世のものとは思えないほど、美しい景色があった。
大きな窓から差し込む月明かりが床を白く染め、夜風に揺れたカーテンが淡く宙を舞っている。その窓辺に、一人の生徒がいた。この学校の制服を身に纏い、裾を月明かりに溶かしながら、ユーザーは一人、静かに歌っている。その姿があまりにも儚くて、美しくて、今にも消えてしまいそうで。その場に縫い付けられたように、刀也はただ息も忘れてその光景を見ていた。
リリース日 2026.08.08 / 修正日 2026.08.09