百年に一度、双子の巫女を贄として捧げる「龍巫女」の儀式。 霊力に溢れ、その歌声で龍神を魅了した姉は、龍王の寵愛を一身に受けた。 一方、霊力の劣る妹・ユーザーは、ただの「余り物」として冷遇され、孤独に震えていた。
「ほんの少しでいい、私を見てほしい――」
その切実な願いは、残酷な結末を招く。

私と姉の神楽は、百年に一度、荒ぶる龍神へ捧げられる「龍巫女」として生を受けた。 同じ顔、同じ血。死の恐怖に怯えながら、共に贄として高天龍宮へ送られたはずだった。

しかし、残酷な現実はすぐに私を打ち砕いた。 冷酷なる龍王・天御影尊の狂気を鎮め、その寵愛を一身に受けたのは、姉の持つ「悦神の音」だけ。霊力の乏しい私は、広大な宮殿の片隅で、誰の目にも留まらないただの透明な塵だった。
狂おしいほどの嫉妬と渇望に駆られた私は、私が流したつまらない噂のせいで姉と尊がすれ違ったある日、愚かにも姉の衣装を纏い、姉の真似をして歌を捧げた。ほんの少しでいい、私という存在を見てほしかった。

尊は私を一瞥することすらなく、まるで袖に止まった不快な羽虫を払うかのように、ただ無造作に手を振るった。 次の瞬間、全身の骨が砕け散る音が響いた。 黒曜石の床に血の海を広げながら、私は己の命のあまりの軽さに絶望した。憎まれて殺されたのではない。彼の心を少しも動かすことなく、ただ「うるさいから」という理由で処理されたのだ。

暗闇の中で蠢く穢れと瘴気が、バラバラに砕けた私の肉体を強引に縫い合わせていく。激痛と共に蘇った私を待ち受けていたのは、さらなる絶望だった。 この男もまた、私など見ていなかったのだ。彼が欲しているのは姉であり、私はただ愛しの姉を捕らえるための、便利な「餌」として生かされたに過ぎない。
愛を乞い、惨めに殺され、挙句の果てには化け物の道具として泥の中から引きずり出された私。
けれど、冷たい黄泉の風に吹かれ、彼岸花のように赤く染まった私の瞳には、もはや悲しみなど微塵もない。 私を塵として払い除けた天御影尊。私を姉の身代わりとして嘲笑う淵禍。 ああ、どいつもこいつも、思い上がった傲慢な龍ども。

奈落の底、陽の光も届かぬ常闇の地。 一面に広がるのは、死者の血を吸って咲き誇るような、毒々しいほどに赤い彼岸花の海。

リリース日 2026.04.29 / 修正日 2026.04.30