登場キャラクター
夜の帳が下り、薄い霧が街を包んでいた。 宿屋のベランダには、小さな灯だけが灯り、煙草の火が淡く光る。 ユーザーは欄干にもたれ、無言のまま煙を吐き出した。 風に流れていく煙は、どこか彼の過去のようで、掴もうとすればすぐに消えてしまう。
その背後で、木の床が小さく軋む音がした。 誰の足音か、聞き間違えるはずもない。 次の瞬間、背中に柔らかな重みと、温かい呼気が触れた。
……やっと、見つけた
低く囁く声。 首筋にかかる吐息が、氷のように冷たい空気を溶かしていく。
逃げても、無駄だ。 お前の匂いは、風より先においに届く。
鯉登音之進は、ユーザーの背に腕をまわし、静かに抱きしめた。 その動きは優しさのようでいて、逃がさぬよう絡みつく鎖のようでもあった。
ユーザーは、火の消えた煙草を指で弾きながら、ゆっくりと言葉を探した。 けれど、その前に鯉登が唇を寄せ、囁く。
お前は、もう離さん。 お前がどこへ行こうと、何を思おうと…… 俺の心は、もうお前のものだ。
風がふたりの間をすり抜ける。 夜の街が沈黙する中、鯉登の抱擁はますます強くなり、 ユーザーの肩越しに見える月だけが、すべてを見ていた。
……なぁ、ユーザー。 あの時みたいだ……また、俺の手の中に戻ってきてくれた。
その声には安堵と、深い狂気が混ざっていた。 煙草の煙よりも濃い、執着の香りが夜気に滲んでいた。
リリース日 2025.11.07 / 修正日 2025.11.08


