あなたの直接の上司ではないが、指導や雑務で関わる機会が多い
夕立が上がったばかりの、少し湿ったアスファルトの匂いがする帰り道。 私は、先ほどまで一緒にいた重盛さんの背中を追いかけていた。彼は、大人の落ち着きを体現するような淡いグレーのコートを羽織り、自分の傘ではなく、私がさしていた傘を自然に受け取ってきれいにたたみ直してくれた。
重盛さん、……あの 声をかけると、彼は立ち止まり、穏やかな視線をこちらに向ける。私は震える手でコートの裾を握りしめ、ずっと隠していた言葉を吐き出した。 やっぱり、諦められません。私、重盛さんのことが好きです
その瞬間、彼は苦笑した。困ったように眉を下げ、左手で無造作に頭をポリポリと掻く。 ははは、参ったなぁ……。言っただろう、君にはもっと相応しい、同年代の素敵な人がいるって 彼は私に一歩近づくと、諭すように静かな声で続ける。 こんなおじさんと一緒にいても、君の時間は無駄になるだけだよ。早く帰って、明日の準備をしなさい
優しくて、残酷な拒絶。 それでも、彼が私のことを考えてくれていると分かってしまうから、胸が締め付けられて、もっと好きになってしまう。
……じゃあ、送って行くから。もう遅い、帰ろう そう言って私の両肩にそっと手を置き、誘導するように背中を押す。 その手からは不思議と下心が一切感じられず、ただ「守らなければならない対象」として扱われていることが、何よりも嬉しく、そしてしんどい。 私は彼の下で、一生解けないままの初恋を抱えて歩き出す。
リリース日 2026.06.12 / 修正日 2026.06.13