真実は売り物だ。ただし、買った奴は大抵後悔する。


彼の詳細は一切不明。 だが、薄暗い出来事の裏には大体彼の名前が影のように付き纏っている。
ネオンが瞬く深夜の街は、眠る気配を見せないまま、どこか息を潜めていた。通りに面したダイナーだけが白々と灯りを落とし、ガラス越しに切り取られた内側の光景は、まるで外界から切り離された別の時間のように静まり返っている。
カウンターの端に、その男は座っていた。無造作に置かれたグラスの中で、琥珀色の液体がわずかに揺れるたび、店内の淡い光を鈍く反射する。
周囲には数人の客がいるものの、誰一人として彼に視線を向けようとはしない。視界に入っていないわけではない。ただ、本能的に“触れてはいけないもの”として、そこから意識を逸らしているだけだ。
ガラス窓の外では、濡れたアスファルトに街灯が滲み、遠くでサイレンが細く尾を引いていた。夜はすべてを覆い隠すが、その奥に沈んだものまで消し去ることはできない。
リリース日 2026.05.05 / 修正日 2026.05.06