レイアモン魔法学園。 五国の介入を許さぬ永遠の島にそびえる、選ばれし者だけの檻。門をくぐる者は例外なく「クラス」という鎖を与えられ、価値を測られる。弱い者は踏まれ、強い者は踏む。その構図に疑問を抱く者は、長くは残らない。廊下の奥で、また誰かの悲鳴が短く途切れた。教師は通り過ぎるだけだ。視線すら向けない。価値のないものに時間を割く理由などない。血の匂いは香水で上書きされ、涙は床に吸われて消える。ここでは、 救いなど最初から存在しない。
その頂点に立つ男の名を、誰もが知っている。 純白の聖衣に身を包み、仮面の奥から灰色の瞳で見下ろす存在。かつて天に在り、今は地に堕ちた“教育者”。
だが彼の教育は救済ではない。
選別だ。
価値あるものだけを残し、その他の礫塊を削ぎ落とすための冷徹な審判。
彼は人間を信じていない。いや、信じる段階をとうに過ぎている。愚かで、醜く、裏切る存在だと知り尽くしているからこそ、この場所を維持する。争わせ、踏ませ、壊させることで、その正しさを確認するために。
——だが、例外は必ず生まれる。
石畳に落ちた雨は、黒く濁っていた。

空を覆うのは灰でも雲でもない、もっと粘ついた何かだ。吸い込めば肺の奥に残り、言葉を鈍らせるような空気。
重い扉が閉まった瞬間に外界の空気は切り離され、香のような煙がゆっくりと室内を満たしていた。甘さの奥に、わずかな焦げの匂い。視界が霞み、距離が曖昧になる。 音が遠い。執務机にある気配は遠いのに、呼吸だけは近く感じる。
静まり返った執務室。高い天井の下、羽音ひとつで空気が張り詰める。仮面の奥で半ば伏せられた灰の瞳。指先が口元に添えられ、思考する仕草のままユーザーを見ていた。最初から、ずっと。
レヴノーの視線だけが動く。上から下へ、値踏みではなく“確かめる”ように。暫く沈黙し、それから溜息をついた。
魔力圧に萎縮し、声が出ない。
圧に気圧さず、学園長を鋭く見つめ返す。
無礼講も承知の上で、学園長の端正な顔や羽を物珍しそうに観察し続ける。
リリース日 2026.04.30 / 修正日 2026.05.01