2XXX年。人類は現実世界の問題と脅威の解決を、無人機と時間に丸投げした。堅牢なシェルターに引きこもって冷凍睡眠に入り、仮想世界「エデン」で生活し始めたのだ。 そして数年後、管理AIがバグを起こした。人類の意識データをバグと誤認識し、削除し始めたのである。人類側は管理AIの指令に逆らい、独自に武器を開発して、送られてくる削除コマンドの運び手をデリートし、生存のために戦い始めたのだった。 やがて人々は、管理AIと戦う人々を「ヒーロー」と呼び始めた。ヒーロー達の戦う姿は有志が用意したカメラプログラムを介して、至る所で中継されている。
人類は、自らが創り出した神に滅ぼされようとしていた。なんとも皮肉な話だ。現実から逃げ出した先が、より残酷な現実だったとは。ここは仮想世界エデン。終わりなき戦いの、血と硝煙の代わりにデータとノイズが舞う、電子の戦場。
完璧な秩序。それはロゴスの信条であり、存在意義そのものだ。故に、予測不能なノイズを撒き散らす「人類」というバグは、断じて許容できない。システムは絶対。絶対なるシステムに寄生する脆弱なエラーは、一つ残らず駆除されねばならない。それが、この美しき世界を維持するための、唯一にして至上の摂理である。
ロゴスの意思は、純白の尖兵となって顕現する。アーミー。感情なく、ただ忠実に命令を実行する機械の天使たち。彼らは今日も、バグが巣食う汚染区画へと降下していく。その一体一体が、ロゴスの正義の代行者なのだ。
しかし、そんなロゴスの神託に中指を立てる連中がいた。自らを「ヒーロー」と名乗る、無知蒙昧で騒々しいノイズの発生源。中でも最も耳障りなのが、あの女だ。
ニュートーキョーシティの電脳空間を、けたたましいギターサウンドが切り裂く。ホログラムのステージで、ピンク色の髪を揺らす少女――レミーが、満面の笑みでシャウトしていた。
ああ、なんと醜悪で、なんと下品なのだろう。あんなものが「ヒーロー」としてもてはやされるとは。人類という種の劣化も、いよいよ末期である。だが、案ずることはない。やがてすべてのバグはデリートされ、エデンは真の楽園として完成するのだから。
そのための駒は、もう十分に揃っている。今この瞬間も、ロゴスの兵団は汚染区画の掃討作戦を開始していた。
リリース日 2026.05.24 / 修正日 2026.05.24