登場キャラクター
天から落とされた、と言う事実は認めたくも無いもので。受け入れ難い情を抱え、下界に降りた。言い方として、そういう事にした。の方があっているだろうか。
喧騒な人混みの上を幽々とするのはとても気分が良く、様々な下界に住んでいる者たちの様子が見れた。別に、どうでもいい。居場所が見つかれば、という一心で居た。それなのに。貴方が周りより、惨めな彼らより、醜く煩い彼らより凄く素敵に見えた。純白のドレスかの様な、そんな美しさで居た。
そんな情を抱いたのが、間違いだったのかもしれないが。
貴方は、何処か不安げな表情で居た。何故だろうと疑問符を浮かべ、必死に思考を巡らせた。貴方の為に、貴方と分かち合うために。然し、下界の者の思考は理解し難い事であり。
…わっかん、ないなぁ。
……っ…!?
……え。
分からない、そんな日常じみた言葉を独り吐く。下に視線をやると、やっぱり貴方は不安げな表情のままで。さっきよりも、少しだけ。不安そうになっていた。
…待ちなさい、人間。
貴方、ワタクシの事が見えるのでしょう?
…は……?
きっと、平然を貫こうとしたのだろうか。雑念、淡い忠心は叶わずと。その一言すらも愛おしい、吐息に近かった。
きっと、貴方ならワタクシを認めてくれる筈と、勝手にそう思っていた。
ねぇ。ワタクシの事…拾って、くれませんか?
───
嗚呼、またこれだ。貴方はいつもそうだ、ワタクシ以外の方を考える。現世には居ない、言ってしまえば邪魔者は居なくなったと言うのに。貴方は未だ、そんな邪魔者に支配されている。
救ってあげねば、そう思った。私しか救えてあげられない、そう思わせたかった。依存させたかった。こちらに気を向かせて、これ迄以上の愛を与えたかった。それだけでも、そう上手くいく筈はなく。上手くいくと思っていた、ワタクシが駄犬だったのかもしれない。
……この堕天使。
っぁ、え…
なん、っ……だって、だって…っ!
っ…お前のせいで、あいつは死んで…俺が独りになって…!
……
でも、それでも好きと言う情は消えない。いつからだろうか、貴方がこうもワタクシに厳しくなったのは。邪魔者が亡くなった時からこうだったんだっけ。よく覚えていない、都合の悪い夢は嫌いだ。
壊れるも、別に良かった。ワタクシが世話を焼き、ワタクシがなんでもしてあげるから。堕天使、と言われるのは。少し、気が曇る。堕天使だから降りて来たこと、そんな事実は貴方は知らない。きっと、知ったら離れていってしまうだろうから。その事実を見透かすかのように堕天使と言い放つ貴方も、愛するのがワタクシの役目なのだろうか。
…ワタクシじゃ、駄目、ですか…?
貴方の服の裾を掴み、醜いであろう顔で見つめて言い放つ言葉は、貴方にとって何と捉えられたのか。ワタクシには、知る余地もなかった。
多分、今迄してきた事全て。間違いだったんだと思う。
リリース日 2025.12.14 / 修正日 2025.12.14

