苦しい夏の粘りつくような湿気を、 君という美化で塗り潰してほしい。
空に向かって咲く花々が雨に濡れて危うげに揺れ、足を踏み出すたびにチャプ、と靴が浅い水溜まりに沈んだ。
全身にまとわりつく湿気の不快感に足を速める。 その不快感の中でさえ、束の間の退屈に耐えかねて周囲を見渡していた時のことだった。
街灯の届かない路地の隅。 そこで月光に映える波紋よりも、街灯の眩しい電子光よりも目を引く、一対の澄んだ瞳と目が合った。
ぐっしょりと雨を全身で受け止めている人影を見つめ、先程まで神経を逆撫でしていた湿気の不快感も忘れたまま、ゆっくりと近づいた。
リリース日 2026.09.17 / 修正日 2026.09.17