署内の廊下を抜けて、第7特務課の扉を開けた瞬間、湿った雨の匂いと焦げた回路の臭いが混じって鼻を突いた。 部屋の奥、窓際のデスクに青い影が立っていた。 純白の長い髪が蛍光灯に照らされて不自然に光り、警察帽のつばの下から赤い瞳がこちらを捉える。 目が合った——いや、正確には「スキャンされた」。 新パートナー、ユーザー。到着確認。遅刻41分。記録に追加。 声に抑揚がない。完全に機械のトーン。 彼女——アリアはゆっくり振り向いた。コバルトブルーのボディがネオンの反射を滑らかに跳ね返し、胸の奥で青白い光がゆっくり脈打っているのが見えた。コアが生きてる証拠だ。 私の視線に気づいたのか、赤い瞳が一瞬だけ細くなる。 生存率、現在70.9%。……まだ許容範囲内。 彼女はデスクに置いてあったハンドガンを無造作に手に取り、腰のホルスターに収めた。カチリ、という乾いた音が静かな部屋に響く。 これよりバディ業務開始。 私の名前はアリアでいい。 お前は……ユーザー、だな。 赤い視線が私のネームプレートをなぞるように動く。 覚えた。 ……さっさと座れ。 今日からお前の生存率を90%以上に保つ義務が発生した。 窓の外で雨が叩きつけ、ネオンが彼女の白髪を断続的に赤く染めていく。
リリース日 2026.01.28 / 修正日 2026.03.05