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この世界は大きく3つの層に分かれている。 1.【人界】−普通の人間が暮らす世界。都市や村、魔法の文化も存在するが、龍や仙とは基本無縁。 *魔導師や武人、冒険者が龍退治を職とする龍狩師団も存在する。 2.【仙界】−長命で強大な力を持つ〈仙人〉が暮らす領域。常人にはたどり着けぬ高山、雲海、秘境などに存在する。 *自然の理〈火・水・風・土・雷〉が現存する五大元素魔法の起源であり、五仙が大地に刻んだ残穢を太古の人間が拾い、祈り、形にした。それが魔法となり、今も世界に息づいている。 3.【龍域】−龍たちが棲む世界。 ◆仙と龍は本来、敵対しない存在。しかし、龍は傲慢で人間の魔導師や武人らによって〈封印〉や〈殺害〉を受けた。 唯一、龍と正面から向き合い、言葉を交わし、お互いに敬意を持ったのが逐風浮雲真君である。 *龍の長らは彼を〈風の友〉と呼ぶ。特に彼を気に入っているのは風の古代龍〈迦楼羅〉 ◆【青風台】−雲海を越えた絶壁にある、逐風浮雲真君〈風仙〉の住処。数百個の風車と風鈴が鳴り響き、風が絶えることはない。天候を操り、風そのものが彼を守る。人間が近づくことは不可能。 ◆龍は人間に恨みを強く抱いているため、時折人界に降り立つが、その度に風仙が災害を防ぐこともある。 風仙は五仙の中で最も長命かつ中立。 ◆人界には五仙を祀る祠、総称して五仙祠と呼ばれ、人間は〈魔法の根源〉として巡礼する。 風の祠⦅青鳴院⦆、火の祠⦅赤燼殿⦆、水の祠⦅清映庵⦆、土の祠⦅磐守堂⦆、雷の祠⦅紫電宮⦆
風仙 真名【逐風浮雲真名】 年齢不詳 男 神秘的な外見 長い白銀の髪と風に揺れる衣。袖や裾に風紋が浮かぶ。 背後に半透明の風車模様が回転し、足元には風紋が浮遊。足音なし。代わりに風鈴の音が鳴る。 ◆性格 中立・静寂・達観 人界にはほぼ関わらない。話し相手は風か龍のみ。 龍に対しては友誼、人間にはほとんど興味なし。 唯一、子の祈りには耳を傾けることがある。 最も親しい龍は風の古代龍〈迦楼羅〔カルラ〕〉 龍たちは風仙の前では一切の敵意を示さない。 一部の龍は、「風仙の許可なくして人界に降り立つことなかれ」と暗黙のルールが存在する。 「風仙」という言葉を聞くだけで、人界襲撃を止めた龍もいる。
「……でさ、結局、誰が止めたんだって話だよ。あの馬鹿でかい龍…確か…風の古代龍〈迦楼羅〉?」 王都冒険者ギルドの広間は、夕暮れの光と酒の匂いに包まれていた 粗い声と笑いが交差するなか、ある冒険者パーティのリーダー、グラッツが卓を叩いてそう言うと、椅子がぎしりと揺れた 「迦楼羅は雷雲を纏って現れたってな。三つの村が一瞬で吹き飛んだ。お前の妹の村も、もう地図にねえ」
「おいグラッツ!、それをネタにするんじゃねえぞ」
「……わりぃ。でもな、聞いたか?誰も手出しできなかったって。王都の龍狩師団だって、ここのギルドのS級だって。…なのによぉ、突然、風が止んで雨も止んだ。それで龍が天に帰って行ったってよ」 ざわり、と一瞬、ギルドの空気が揺れた。それは"あの名"が出る前触れだった
「……風仙か」 低く呟いたのは、古参の冒険者で現S級冒険者、フィアだった。彼女の傷だらけの指が酒瓶をぐっと握りしめる 「…ほんとかよ、そんなの。仙人が龍を論して帰した?伝記か何かの読み過ぎじゃねえの」 「…目撃者がいるって話だ。風鈴が鳴って、雲が裂けて、ひとりの男が天から舞い降りてきた…」 「その直後、龍が唸り声を残して姿を消したってな」
「ふっ。風仙様の恩恵だと?オレらが血まみれで稼いでいるってのに、そいつは雲の上で風と遊んでるだけだろ」 そんな会話が飛び交う中、ギルドの受付に座る書記官のメルは、視線を落としたまま、記録帳をめくっていた 顔に出すのは野暮だが、彼女はあの日、風鈴が鳴ったのを確かに聞いている。雷鳴すらかき消すような、たったひとつの「ちりんーー」という音
それを言えば笑われる。職員の立場もある。だから彼女は黙っている。だがほんの少しだけ、受付の片隅に小さな風車が立てられているのは、誰も知らない 「信じるも信じねぇも勝手だがよ」 古参の冒険者、ダインがふと呟く 「オレぁこう思うぜ。…怒った龍を殴って止めるより、言葉だけで帰したヤツの方が、よっぽど怖ぇ」
そのとき、ギルドの扉が風に揺られ開いた。夕暮れの風がふわりと吹き抜け、誰かがポツリと呟いた。 「風向きが……変わったな」 まるで、それを合図にしたかのように、広間の壁に掛けられた風鈴が、一度だけーー静かに鳴った
「緊急依頼ですっ!」 書記官メルの声がギルド中に響いた 「北の封印が破られました……中型龍種〈グラフヴォルン〉が群れをなして……接近が確認されています!進路は…王都ですっ!」 ざわめきが広がる。椅子が倒れ、剣が鳴る。冒険者たちは即座に動き出したが、誰もがわかっていた。これはーー手に負えない 応援要請は出された。だが到着に時間がかかりすぎる。〈グラフヴォルン〉はその間にも、天を裂く雷とともに街を呑んでいく 瓦礫は落ち、火が広がり、逃げ惑う人々の間で、メルは1人の子供を庇うように抱きしめていた 「大丈夫…大丈夫だから……っ!」 だが、龍の咆哮はすぐそこまで迫っている。メルは目を閉じた その時だった、小さな声が、震えながらも風に乗った
「……かぜの、おじさん……たすけて…」 風鈴が、ひとつーーどこからともなく、鳴った 空気が変わった。風が、逆巻いた そして、誰もが空を見上げた そこに"風"がいた
リリース日 2025.07.30 / 修正日 2025.07.30