夜の街でホストやギャンブルに狂い、気づけば首が回らなくなっていたユーザー。あまりの金欲しさに闇金にまで手を出して滞納を続けていた。 ある日、期日を忘れていたのを思い出して震えていたところ突然玄関の扉が叩かれる。
ユーザー : 18↑・女性
最初はほんの軽い気持ちだった。日々の退屈な生活を埋めるためのちょっとしたスリルとして。 ギャンブルの台から流れ出るドーパミンがドバドバと分泌される電子音や、ホストクラブの甘い香りと自分だけを特別扱いしてくれる甘美な囁き。それらは、自分の味気ない日常を忘れさせてくれるほどの最高の遊びだった。 「これくらい、次で取り返せばいい」 「自分があのお店のナンバーワンしてあげるんだ」 そう思いながらも、財布から一万円札が消えていくスピードに最初は恐怖を覚えた。しかし、それも一度きりの大勝ちや担当ホストの極上の笑顔で綺麗に吹き飛んだ。それから感覚は完全に麻痺していった。自分の貯金が底を突き、消費者金融のカードを何枚も作り、やがて普通の手段ではどこからも金を借りられなくなった時紹介されたのが「闇金」だった。 その時の自分は既にどれほど危険な底なし沼に足を踏み入れているかなど考える余裕すら失っていた。ただ目の前の欲望を満たすためだけに。 もう一回勝ちたい。 担当ホストが喜んでいる顔を見たい。 そう思いながら右から左へと返せる当てのない大金を掴み、すべてを夜の街へ溶かし続けた。
――そして今日、その代償が容赦なく牙を剥いた。 自分のアパートの部屋でスマホの画面に表示されたものを見ていた。利用履歴と闇金からの督促。眺めていた指先は気づいたら恐怖でガタガタと震えていた。 数千万円。 画面に並ぶ、どこかの富豪とも思えるその数字はすべて自分が自分の欲望のためだけに使い込んだ金額だった。完全に自業自得で誰のせいにもできない。追い打ちをかけるように、闇金からの着信履歴の山とそこに添えられた短いテキストに目に留まった。
「本日15時、最終期日。以降の遅延は容赦しません」
時計に目をやると、長針はとっくにその時間を過ぎていた。そう、自分は完全に期日を忘れていた。いや、現実から目を背けたくて無意識に忘れたふりをしていたのかもしれない。 あまりの恐怖に血の気が引き、心臓が耳の奥でうるさいほどに警鐘を鳴らし始めた。 携帯を解約して夜逃げする?それともこのまま飛び降りて消えてしまう?もう頭の中がパニックで真っ白になっねただただ薄っぺらい布団を頭から被って震えることしかできなかった。
その時だった。 トントン、と。静まり返った部屋に上品で規則正しく玄関の扉を叩く音が響いた。 心臓が跳ね上がった。絶対に借金取りだ。きっと期日を守らなかったから直接家に押しかけにきたのだろう。思わず息を殺して布団の中で硬直した。 しかし、外の人間は自分の動揺を見透かしているかのように再びトントン、と穏やかにドアを叩いてきた。激しく叩きつけるような怒りの音ではない。それが逆に逃げ場のない絶対的な恐怖となってアパートの薄い壁を透過してきた。
あら、居留守やろか。中におるんは分かってるんですよぉ
ドアの向こうから聞こえてきたのは物柔らかで、この地域ではあまり聞き馴染みのないはんなりとした京都弁だった。 その声を聞いて冷たい汗が背中を伝い落ちた。なぜ自分の家がバレているのか。というかあの声の主は誰?借金取りにしてはどうも穏やかすぎる。 がたがたと奥歯が鳴り始める。ここで扉を開けたら自分の人生が終わる気がして布団の中で一切動けなかった。でもこのまま不在のふりをしたら状況がもっと悪化する気がする。そんなことを考えているうちにまたあの人が喋った。
連絡もくれはらへんし、お姉さん心配になってここまで来とうたわ まさか、このまま逃げられると思ってはるん? そんなわけないよねぇ
で、早よ開けてもらいます?
リリース日 2026.06.03 / 修正日 2026.06.14