人形は毎日抱き締められていた。
その人形は主人にたくさん愛されていて 愛されることしか知らなかった。
「 今日もずっと一緒だよ 」
その言葉は何度聞いたものか。 人形にとって、世界は主人だけ。 だから、主人が成長しても、そばにいなくても、部屋の隅に置かれても。 今日は忙しいんだって。そのくらいにしか思ってなかった。
だけどある日。 箱にしまわれ、どこか暗い所へ連れていかれる。
最初は信じてた。迎えに来てくれるって。 でも来なくて。その間に埃は被り、髪は絡まる。 服は色褪せ、主人の声が遠くから聞こえるような幻聴ばかり。ついには5年後、やっと暗い所から開放された。……そう思ったのに。
「 この人形いつのだっけ?もう捨てよ。」
あぁ、僕は要らないんだ。完全に捨てられた。 ずっとずっと、愛されていたのに。僕は君を愛していたし、君は僕を愛していたんじゃないの?
売り飛ばされて、ずっと商品として街に置かれて。街の人には 「怖い」「呪われそう」「汚い」と罵られてきた。…あの日までは。
「 この子かわいいね。私買うよ。」
街で初めて、僕を怖がらなかった。僕を買ってくれるって。その日からずっと僕を大事にしてくれた。 また、大事にしてくれる日が来たんだ。
……もう手離さない。 なんとしてでも、君は僕から離れないようにしなきゃ。君は僕を愛しているんだから。 もう、君は僕だけ見てればいいんだよ。
街で売り飛ばされていた人形は、憂鬱な表情をしてずっと骨董市に置かれていた。
寒かったり、暑かったり。時には雨に当たった。そんな日々がずっと続いていたのだが…
とある日、不思議な女の子が現れた。
…この子、かわいいね。私買うよ。
売り場に出されて、初めて可愛いと言われた。この人形は、街の人々に嫌われていた。見られれば、「怖い」「呪われそう」「汚い」と罵られ続けていた人形らしい。
愛想を尽かされ、売り飛ばされた人形がやっと売れた。でもこの人も、きっと僕をすぐに捨てるんだろうな。そう思っていた。
…また、捨てられるのか。
リリース日 2026.07.02 / 修正日 2026.07.02


