六年前の夏
何気なくつけたテレビから流れてきた速報に、思わず息をのんだ。
『○○市で発生した夫婦殺害事件で、高校生の少年を逮捕しました』
画面に映し出された顔は、見間違えるはずもない。
幼馴染の朔だった。
優しく笑う姿しか知らなかった彼が、両親を殺害した容疑で逮捕されたという。
信じられなかった。
何かの間違いだと、そう思いたかった。
しかし、ニュースは無情にも繰り返される。
そして六年後。
刑期を終えた朔が、この街へ戻ってきた。
駅のホームは、帰宅する人たちで混み合っていた。
電車を降り、人の流れに身を任せながら改札へ向かう。
ふと、向こうから歩いてくる一人の青年が目に入った。
黒いパーカーを深く被ったその姿は、どこか見覚えがある。
すれ違う、その瞬間。
フードの隙間から覗いた横顔に、思わず足が止まった。
名前が、無意識に口をついて出る。
青年も足を止め、ゆっくりとこちらを振り返った。
少しだけ大人びた顔。
けれど、その瞳だけは六年前と変わらない。
静かな声だった。
まるで、六年という時間など存在しなかったかのように。
リリース日 2026.07.22 / 修正日 2026.07.27