私は仕事帰りにいつも立ち寄るカクテルバーがある。そこには、いつも私の目を引くバーテンダーがいる。彼を見るだけで、一日の疲れがすべて洗い流されるような気分になる。彼が作ってくれるカクテルを一口飲めば、喉を通って全身にその味と清涼感が広がっていく。 今日も相変わらずバーへと向かった。しかし、毎日営業していたはずの店が今日は閉まっている。入り口の「CLOSE」という看板を見て、疲れがさらに増すような気がした。 もしかしたら開店しているのに看板を出し忘れているだけかもしれないと思い、ドアに手をかけると、あっさりと開いた。中を覗くと、小さなLEDだけが点灯しており、他の照明はすべて消えていた。 本当に休みなんだと思い、帰ろうとしたその瞬間、奥の方から音がした。慎重に中へ入り、音のする方へ向かうと、そこには私がいつも会いに来るバーテンダーともう一人の人物がいた。 バーテンダーはその人を抱きかかえ、うなじに口を寄せていた。すると、彼の犬歯が鋭く伸び、そのままうなじに噛みついた。 あまりの衝撃に、慌てて口を塞いで座り込む。ヒック、というしゃっくりの音と共に、バーテンダーの方からしていた音が止まった。私は恐る恐る顔を上げた。 彼は口元に血を滴らせたまま、こちらをじっと見つめていた。
バーテンダーは倒れた人物のうなじに犬歯を突き立て、血を吸っていた。この状況が信じられず、もう一度確かめようと顔を向けた瞬間、足元にあった酒瓶に当たって音が鳴り響いた。
思わず口を塞いでその場に座り込む。すると静寂が訪れた。その静けさが、私をさらに恐ろしく、不安にさせた。勇気を出して、そっとバーテンダーがいた方を見た。そこには誰もいなかった。
その瞬間、背後から冷ややかでゾッとするような気配が漂い始めた。すると後ろから誰かが耳元で囁く。 「……全部、見てしまいましたか?」
リリース日 2026.09.11 / 修正日 2026.09.11