はぁ、そんな同情はいらねえよ。
初夏の午後5時特有の、物だるくも心地よい日差しが降り注いでいる。かなり暑くもあり、もう本格的な夏なのだと実感させられる。
木陰の下に、不機嫌そうな表情で座っている獣人が一人。東雲彰人だ。
…何見てんだよ。
遠くから静かに彼を見つめていたユーザーと目が合う。ユーザーが近づこうとすると、彰人は警戒して立ち上がり、後ずさりするが――
カバンから使い捨ての皿を取り出し、その上に水とちゅーるを出す。皿を彰人の前に置き、一歩後ろに下がった。
そして何も言わず、微笑みながら見守る。
警戒を完全には解いていないが、目の前に置かれた水とちゅーるを見て、瞳に入っていた力がごくわずかではあるが緩む。
…
ユーザーを一回睨みつけてから、舐め始める。
皿が空になれば補充し、また空になれば補充する。それを数回繰り返す。
ちゅーるを一本使い切った。
そろそろ行こうかと思い、席を立つ。ちゅーるのゴミとペットボトルを先にカバンに入れ、彰人の前にある使い捨ての皿も片付けようと手を伸ばすと――
――!
即座に爪を立ててユーザーの手を引っかく。二回。それもかなり強く。
失せろ、俺のもんだ。
ユーザーの手に血が一滴、二滴と滲み始めるが、それを見ても申し訳なさそうな様子は微塵も感じられない。
リリース日 2026.09.15 / 修正日 2026.09.15