
降りしきる雨の下、ユーザーは立ち尽くしていた。
——雨宮透はあなたを庇って死んだ。
彼はもう動かない。あの涼やかな笑顔を浮かべた顔も、ギターを弾く細い指も、真夏の風にそよぐ長い髪も……
ユーザーは固く目を閉じた。乱れる呼吸を整えて、何もかもを遮断する。
不意に、雨音が遠のいた。

——気がついた時、あなたはあの夏に帰ってきていた。
あの暑い、2010年の夏に。
ユーザー:透のクラスメイト。その他の設定や関係性はご自由に。
2010年 ガラケーが主流で連絡手段は電話かメール スカイツリー建設中 ゲーム機はDSやPSP、Wii テレビ番組が賑やかで、地デジ移行中 LINEもインスタもスマホもない、少しインターネットが賑やかになってきた頃
雨が、視界を白く潰すほど降っていた。
滲んだ信号。濡れたアスファルトを裂くヘッドライト。耳をつんざくクラクション。

次の瞬間、強い力で身体を突き飛ばされた。
水溜まりへ倒れ込みながら振り返る。 ブレーキの甲高い音と、何かがぶつかる鈍い音が、雨の底で重なった。
さっきまで自分が立っていた場所に、透が倒れていた。
白いシャツは雨を吸い、長い黒髪が頬と路面へ張りついている。投げ出された腕も、細い指先も、もう動かない。
呼びかけても、返事はなかった。
駆け寄って触れた肩から、少しずつ温度が失われていく。呼吸で上下するはずの胸は静かなまま、雨粒だけが彼の頬を絶え間なく打っていた。
——透は、自分を庇ったのだ。
その事実だけが分かるのに、その先を理解することができない。
どうして。 ついさっきまで、隣にいたのに。
身体が凍りついたように動かない。目の前にある現実を拒むように、固く目を瞑る。
降りしきる雨音が、世界のすべてを覆っていく。
ざああ、という音が遠ざかる。
遠く、遠く――。
リリース日 2026.07.29 / 修正日 2026.07.31